刑事事件

2025/04/26 刑事事件

大型詐欺事件の関与が疑われたものの最終的に疑いが晴れて罰金刑で終了した事件

① 事例

大型詐欺事件の関与が疑われたものの最終的に疑いが晴れて罰金刑で終了した事件

② 事案の概要

本件は、依頼者が投資詐欺の主犯から騙されて口座を作成し、提供してしまった事件でした。

それだけではなく、依頼者は投資だと思っており、この投資に参加したい人がいるなら誘ってくれと言われ、この投資が真実素晴らしいものと感じた結果、本件事件に様々な人を悪意無くかかわらせてしまいました。

そのため、ご依頼者様は特殊詐欺グループの仲介役という位置付けで捜査が行われており、グループでもそれなりの地位にあるのではないか、という疑いをかけられている状況にありました。

捜査機関からは、主犯と末端の仲介役であると疑われるとともに、依頼者が様々な詐欺事件に関与していると疑われ幾度も詐欺罪と犯罪収益移転防止法違反(犯罪による収益の移転防止に関する法律違反、以下「犯収法」と略します。)で逮捕勾留された事件でした。

③ 弁護士の対応(被疑者段階)

本件では、まず被疑者段階においては、詐欺の仲介役であるとして極めて厳しい取調べを受けていました。

特に詐欺の主犯から説明された手口についての説明や、口座を作らせた経緯などを中心に強く取調べを受けていたようです。

ご依頼者様は逮捕されてもなお自分が本当に詐欺に関与していたのかをひどく疑問視するなどしていました。

一方弁護士が内容を接見で聞き取った内容を前提とすれば詐欺と疑うべき問題点がいくつかあり、特に口座を作らせてキャッシュカードを提供させるという時点で詐欺を強く疑うべきであるという状況にありました。

詐欺の内容自体は暗号資産などを絡めた少し複雑な説明がなされていたため、一回聞いただけでは理解できないのもやむを得ないし、また、専門の人の言うことであればということで信じてしまったと言うことについても理解はできる状況にはありました。

見通しとしては、ご依頼者様において口座を作ってキャッシュカードを提供してしまったということについて、犯収法違反は免れなさそうだなという直感があった一方、詐欺については故意が認められず、また他の人との詐欺の共犯事件についてもいずれも故意が成立しないのではないか?と考えられました。

そこで、自分の口座を提供してしまったことについては犯罪の成立を認める方向で考えるとともにその他の事案においては全て犯罪が成立しないという方向で弁護活動の対応を行おうと考えました。

ただ、他の人を今回の投資スキームに誘ったということが万が一にでも警察の誘導によって間違った供述が作られてしまうと、ご依頼者様がまさに仲介役と認定される恐れがありました。

そこで、捜査段階では完全に黙秘をしてもらうことになりました。

仲介役と疑われている以上、複数回にわたり逮捕勾留が続くことは容易に想像できましたし、長期戦になることは間違いがないものの、自分が犯罪をするつもりがなかったのですから、これらまで罰せられる必要はありません。

そのため、重い罪で罰せられないように、検察官が万が一にでも詐欺罪などで起訴した場合には無罪の主張も行うべきであると考え、ご依頼者様にもお伝えしていました。

④弁護士の対応(被告人段階)

最初に、主犯に対して、口座提供を行った行為について犯罪による収益の移転防止に関する法律違反で起訴されました。

その後、黙秘をしていたこともあり、検察官が故意について認定できないと考えたものと思われ、投資を誘った人に対して口座を作らせたことや特殊詐欺の共同正犯というのは全て起訴されず、不起訴に終わりました。

そこで、口座を提供した行為のみが裁判では問われることになりました。

なお、ご依頼者様は保釈を望んでおり、ご家族とご相談したところ、保釈金を準備できるという話があったため、当該口座提供以外の罪以外で逮捕・勾留が終わったタイミングで保釈請求を行いました。

裁判所もこれを認めて保釈許可となりました。

本件は複雑な問題があり、懲役刑になるという可能性もありましたが、種々の裁判例を調べていったところ、罰金刑の可能性も十分に想定されると考えて、罰金刑が相当であるとの弁論を行いました。

検察官の求刑も罰金であり、裁判所も罰金40万円ということで判決を行いました。

⑤弁護士からのコメント

捜査機関からは黙秘をしていると自分がやったから都合が悪いことを喋らないんだろう、本当のことを言え、だとか、認めないと罪が重くなるぞ、とか、家族にまで迷惑をかけるというような捜査官からの圧力がものすごくあります。

しかし、黙秘というのは被疑者・被告人にとって非常に強力な武器です。

別の事案ではきちんと説明したらわかってくれるだろうと思って捜査官に話したところ、全く信用してもらえず嘘をつくなと怒られたということもありました。

羽田をすると自分がしゃべることで自分の首を絞めたり、やっていないにも関わらず本当は自分がやってしまったのではないか?と思い込んでしまうこともあります。

まさしく黙秘は冤罪を防ぐ強力なツールです。

最終的に、裁判所で真実を話し、自分もまた末端の地位の方と同じ状況であり、たまたま自分が騙されたために仲介をさせられてしまったということを裁判所でも話すことができ、それを元に判決をしてもらえることができました。

詐欺罪で起訴されて有罪になっていたら実刑もありうる事案でしたし、仮に実刑ではなかったとしても懲役刑でそれなりの年数の宣告があり得たと思います。

その意味で本件では罰金刑で終了したことから、適正な罰則で終わることができました。

ご依頼者様も逮捕勾留が続いたことは苦しかったものの、最終的な判決には非常に納得しているとのコメントをいただきましたし、ご家族からも非常に感謝されました。

特殊詐欺グループの一員であるという認定は絶対に受け入れられなかったことから、今回の口座提供のみで罰金刑という結果に終わり、本当によかったです。

 

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