2025/04/27 交通事故
自転車通勤中の自転車同士の出会い頭事故、労災適用と示談交渉で適切な補償を獲得した事案
① 事例
自転車通勤中の自転車同士の出会い頭事故、労災適用と示談交渉で適切な補償を獲得した事案
② 事案の概要
ご依頼者様は、自転車で会社へ通勤する途中、見通しの悪い信号機のない交差点に進入したところ、左方から進行してきた相手方の自転車と出会い頭に衝突しました。
この事故により、ご依頼者様は転倒して首と手首を負傷し、治療が必要となりました。
相手方が未成年であり、自転車同士の事故であったため、治療費の負担や今後の補償について不安を感じ、当事務所にご相談に来られました。
当初、ご依頼者様は健康保険を使って治療を受けようとしていましたが、通勤途中だったため労災を使うことができる状況にありました(労災が使える場面では健康保険を使用できないことがあります)。
また、自転車同士の出会い頭事故ではあったため、双方の過失割合についても争いになる可能性がありました。
③ 弁護士の対応
・労災保険(通勤災害)の申請サポート:まず、事故状況やご依頼者様の勤務状況、通勤経路などを詳細にヒアリングしました。
その結果、本件事故が業務との関連性が認められる「通勤災害」に該当する可能性が高いと判断しました。
ご依頼者様には健康保険から労災保険への切り替え手続き(療養補償給付請求)と、休業補償給付の申請を会社を通じて提出するようにお願いをしました。
必要な書類(事故証明書、診断書など)の収集については当方で対応をして、最低限必要な書類の記載をご依頼者様にお願いして、会社を通じて労災の申請手続きを迅速に進めました。
当初、会社の担当者の方から、労災に関して何度か問い合わせがあり、労災申請を行うと会社の保険料が上がるのではないか?などと質問がありました。
ここは誤解が多いところなのですが、通勤災害では会社の負担する労災保険料は上がりません。
そのため、会社としても従業員が通勤時に怪我をしたということであれば、利用してもらって全く問題はありません。
会社の誤解も解けて、ご依頼者様に労災保険が適用されたことにより、ご依頼者の治療費の自己負担がなくなりました(療養補償給付では過失割合に関係なく全額治療費の支払いを受けることができます。)。
また、仕事を休んだ期間については休業補償給付が支給されることになりました。
・相手方との示談交渉:労災保険は、慰謝料や自転車の修理費など、全ての損害を補填するものではありません。
そこで、労災保険とは別に、相手方に対して自転車の破損(物損)と休業損害や慰謝料等の損害賠償請求を行う方針としました。
ただ、実際に賠償請求をするに当たっては治療を進めて症状固定まで治療をしてもらう必要があったため、まずはご依頼者様には治療に専念してもらうことになりました。
もっとも、相手方との交渉の結果、物損事故については、相手方に全額負担をしてもらえることになったため、物損の示談書を作成しました。
そうしたところ、実は相手方に自転車保険がついており、相手方の保険会社とのやりとりを行うことになりました。
保険会社としては過失割合があると考えているとのことだったため、当該過失割合について争うことも検討しました。
もっとも、最終的にご依頼者様の意向により、保険会社の主張する過失割合は争わずに慰謝料等を受領する方針になったため、労災にて受領している金銭を考慮の上、慰謝料及び休業損害の請求を行いました。
・示談成立:過失割合について双方合意に至り、Aさんは労災保険からの給付に加えて、相手方保険会社からから慰謝料等を含む約80万円の賠償金を受け取る内容で示談が成立しました(労災保険からは相手方保険会社から支払われたものとは別に、治療費が約45万円支払われ、休業補償を約15万円受け取りました。)
④ 弁護士からのコメント
通勤中や業務中の自転車事故であっても、要件を満たせば労災保険が適用される可能性があります。
労災保険を利用する大きなメリットは、治療費の自己負担がなくなること、そして過失割合に関わらず(ご自身の過失が大きい場合でも)治療費や休業補償(一部)を確実に受けられる点です。
相手方が保険に加入していないかもしれない場合や自分の過失が大きくなりそうな事案では、労災保険を利用することで治療に対する不安を無くしていくだけではなく、後々賠償金を受け取る際に受取金額を大きく変えるポイントです。
今回のケースのように、まず労災保険を適用して治療費の負担を軽減し、安心して治療に専念できる環境を整えることは非常に重要です。
その上で、労災保険ではカバーされない慰謝料や物的損害などについて、相手方に損害賠償請求を行うことで、最終的に適切な補償を得ることが可能になります。
本件では、労災を利用していなければ、本来は治療費や休業損害についても過失相殺の対象になるため、おおよそ30万円程度受け取る金額が少なくなるところであったため、その意味でもできる限り受け取ることのできる金額を守ることができました。
自転車事故は、自動車事故と比べてドライブレコーダーなどの客観的な証拠が乏しい場合が多く、過失割合で争いになりやすい傾向があります。また、相手方が保険に加入していないケースも少なくありません。
埼玉県では自転車保険に加入することが義務付けられており、2024年4月時点で自転車保険への加入を義務づけているのは、34都府県です。また、10道県は「努力義務」を条例で定めています。
最近の道路交通法の改正でも自転車運転の規制が強化され、これまではなかった罰則や反則金がつくようになるなど、自転車の運転に対して国も非常に強い関心を持っているといえます。
通勤・業務中の事故に遭われた場合は、労災保険の適用の可否を含め、事故直後から弁護士にご相談いただくことで、手続きの負担軽減や、より有利な条件での解決につながる可能性が高まります。お困りの際は、ぜひ一度ご相談ください。
自転車での交通事故や物損事故について、当事務所では多くの取り扱いがあります。
埼玉県では上尾市や桶川市、伊奈町のみならず、さいたま市、戸田市、蕨市、川口市、朝霞市、越谷市、川越市、熊谷市など、埼玉県の全域からご相談・ご依頼をいただいております。
また、埼玉県内のみならず、東京都や千葉、神奈川、群馬、栃木、茨城などの関東圏内等、埼玉から大きく離れた広島県や福岡県、沖縄県などの交通事故の取り扱いもしており、ご好評をいただいております。
特にご自身やご家族が入られている自動車保険などに弁護士費用特約がついていれば、自己負担なくご依頼することが可能かもしれません。
交通事故に遭われてお困りの方はぜひ一度、池長・田部法律事務所にご相談ください。