2025/05/11 コラム
交通事故の「むちうち」を甘く見ないで!適切な治療と補償のための注意点
はじめに
交通事故に遭われた皆様に、心よりお見舞い申し上げます。交通事故によるケガの中で、最も多く見られるものの一つが「むちうち」です。追突事故など比較的軽微な事故でも起こりやすく、「たいしたことはないだろう」と軽く考えてしまう方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、むちうちは外見からは分かりにくく、後から症状が悪化したり、長引いたりすることも少なくありません。適切な治療を受け、正当な補償を得るためには、いくつか知っておくべき重要な注意点があります。
このコラムでは、交通事故でむちうちになってしまった場合に、特に気をつけていただきたい点を解説します。
むちうちとは?(症状と特徴)
「むちうち」は俗称で、正式には「頸椎捻挫(けいついねんざ)」や「外傷性頸部症候群(がいしょうせいけいぶしょうこうぐん)」などと呼ばれます。交通事故の衝撃で、首が鞭(むち)のようにしなり、首の筋肉や靭帯、神経などが損傷することで起こります。
主な症状としては、
- 首の痛み、首が回らない
- 肩こり、背中の痛み
- 頭痛、めまい、吐き気
- 腕や手のしびれ、脱力感
- 耳鳴り
- 全身の倦怠感、集中力低下
などが挙げられます。これらの症状は、一つだけでなく複数現れることもあります。
むちうちの厄介な特徴として、
- 外見上の傷がなく、分かりにくい
- レントゲンやCT検査では「異常なし」とされる場合がある
- 事故直後には症状がなく、数時間~数日経ってから痛みや不調が現れる、または悪化することが多い
という点が挙げられます。そのため、事故直後に「大丈夫だ」と思っても、決して油断はできません。
事故直後にやるべきこと【重要】
むちうちかもしれないと感じたら、以下の対応を必ず行ってください。
- 警察への届出(人身事故として):
- たとえ軽い事故でもまずは必ず警察に届け出ます。まずは物損事故(物件事故)として届け出ても問題ありません。とにかく事故があったことそのものについて届けを出してください。その際、少しでも痛みや違和感があれば、「人身事故」として届け出るか、後日診断書を提出して「物損事故」から「人身事故」へ切り替えることを検討してください。特に過失割合のあるケースの場合には、人身事故扱いになっていないと、警察で実況見分調書が作られないために後の治療費や慰謝料の請求で不利益を受ける可能性があります。ご自身が人身事故として届出を出すべきかどうか悩んだら一度弁護士に相談しましょう。
- 速やかに病院(整形外科)を受診:
- 事故に遭ったら、症状がどんなに軽くても、必ず事故当日または遅くとも翌日には病院、特に「整形外科」を受診しましょう。「そのうち治るだろう」と自己判断せず、まずは医師の診察を受けることが極めて重要です。どんなに忙しかったとしても、事故から時間が経ってから初診となると事故との関連性に疑義が生じます。そして、初診は整骨院・接骨院ではなく、最初に必ず医師(整形外科など)の診断を受けてください。
- 医師に症状を正確に伝える:
- 診察時には、「いつから」「どこが」「どのように痛むか」を具体的に伝えましょう。首の痛みだけでなく、頭痛、めまい、しびれなど、感じている症状はすべて、些細なことでも漏らさずに伝えることが大切です。事故直後からの症状の一貫した訴えが、後の補償において重要になります。
- 相手(加害者)と保険会社の情報を確認:
- 加害者の氏名、住所、連絡先、加入している自賠責保険・任意保険の会社名、証明書番号などを正確に確認しておきましょう。初期の段階ではわからなくとも、相手方の任意保険会社から書類が送られてきますので、きちんと確認をしましょう。もしも自賠責保険の番号などが必要な場合には自動車安全運転センターで交通事故証明書を取得したりするとわかります。
治療中の注意点
むちうちの治療は、数ヶ月単位でかかることも少なくありません。治療期間中は以下の点に注意しましょう。
- 医師の指示に従い、継続的に通院する:
- 症状が軽くなったと感じても、自己判断で通院をやめないでください。 最初の診断書に「加療2週間」などと記載があったとしても、その後も医師が治療の必要性を認める限り、指示された頻度で定期的に通院を続けることが重要です。2週間以上通って大丈夫かなと思ったとき、もしも怪我のことそのもので心配なら医師に相談したり、保険会社との関係で不安であれば弁護士に相談するといいでしょう。
- 通院頻度が極端に低い(例:月数回など)場合や、長期間通院が途絶えると、「症状は軽い」「もう治った」と保険会社に判断され、治療費の支払いを打ち切られたり、後遺障害の認定で不利になったりするリスクがあります。
- 症状の変化は都度医師に伝える:
- 治療中に症状が改善しない、悪化した、しびれなど新たな症状が出てきた、といった変化があれば、その都度必ず医師に伝え、カルテに記録してもらうことが重要です。
- 安易な治療費打ち切りに応じない:
- 治療開始から数ヶ月経つと、加害者側の保険会社から「そろそろ治療を終了しませんか?」「症状固定にしませんか?」といった連絡(治療費打ち切りの打診)が入ることがあります。しかし、まだ痛みやしびれが残り、医師が治療の継続が必要と判断している場合は、安易に同意しないでください。 こうした打診があった場合は、弁護士に相談する良いタイミングです。
- 整骨院・接骨院への通院について:
- 医師が、整形外科での治療と並行して整骨院等での施術(マッサージ、電気治療など)を受けることを有効と認め、許可または指示を出した場合は、保険会社に認められる可能性があります。ただし、必ず事前に医師の許可を得て、その旨を保険会社にも伝えておくことが重要です。医師の許可なく自己判断で通院した場合、施術費用が支払われない可能性があります。
- 健康保険の利用も検討:
- 加害者側の保険会社が治療費の支払いを渋る場合や、ご自身の過失割合が大きい(または争いがある)場合は、ご自身の健康保険を利用して治療を受けることも可能です(「第三者行為による傷病届」の提出が必要)。自由診療よりも自己負担を抑えられます。なお、労災を利用することも非常に重要になる場合があります。特にご自身に過失が発生するような事故の場合には労災を利用すると、過失に関係なく治療費の負担を労災にて対応してくれます。会社に労災の申請をお願いしてください。時に会社から嫌な顔をされるため労災にしない方がいらっしゃいますが、会社が保険料があがると勘違いしているケースもあります。たいていは業務中ではなく通勤途中で発生する事故(通勤災害)です。労災のうち、通勤災害は保険料が上がらないので、会社の負担は増えません。会社に通勤中の事故については保険料が上がらないことを伝えましょう。過失が1割発生し、10割の治療費が合計40万円であった場合、4万円が自己負担になるかどうかは後々大きな問題になります。
後遺障害認定を目指す場合の注意点
治療を継続しても症状が改善せず、痛みやしびれなどの症状が残ってしまった場合、「後遺障害」として認定を受けることで、別途、後遺障害慰謝料や逸失利益(後遺障害による収入減)の補償を受けられる可能性があります。
- 症状固定: これ以上治療を続けても症状の改善が見込めないと医師が判断した状態を指します。むちうちの場合、事故から6ヶ月程度の治療期間が一つの目安とされることが多いですが、症状や経過により異なります。
- 後遺障害診断書: 症状固定の診断を受けたら、後遺障害等級認定の申請のために、医師に「後遺障害診断書」を作成してもらいます。この書類は等級認定の最も重要な資料となるため、これまでの症状経過、MRIなどの検査結果(画像所見や神経学的所見)、自覚症状などが、具体的かつ正確に記載されているかが非常に重要です。作成前に弁護士に相談し、記載内容についてアドバイスを受けることも有効です。
- 必要な検査: むちうちによる神経症状(痛み、しびれなど)を客観的に示すために、MRI検査(レントゲンでは写らない神経や軟部組織の状態を確認)や、神経学的テスト(医師が行う徒手検査)などを適切な時期に受けておくことが望ましい場合があります。
- 後遺障害等級(14級9号、12級13号): むちうちで認定される可能性のある後遺障害等級は、主に第14級9号(局部に神経症状を残すもの)と第12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)です。14級は症状の存在が医学的に「説明可能」な場合に、12級は症状の存在が医学的に「証明可能」(画像所見や神経学的所見などで客観的に示せる)な場合に認定されるとされていますが、特に12級の認定ハードルは高いのが実情です。
- 被害者請求: 等級認定の申請方法には、加害者側の保険会社に任せる「事前認定」と、被害者自身(または依頼した弁護士)が必要書類を集めて申請する「被害者請求」があります。症状を的確に伝えるためには、有利な資料を精査して提出できる「被害者請求」を検討する価値があります。
弁護士に相談するメリット
むちうちの事案で弁護士に相談・依頼すると、以下のようなメリットがあります。
- 保険会社からの不当な治療費打ち切り要求への対応。
- 適切な後遺障害等級認定を得るためのサポート(診断書作成のアドバイス、被害者請求の代行、異議申立て)。
- 慰謝料などの賠償金を「弁護士基準(裁判基準)」で請求できる(保険会社の提示額より増額するケースが多い)。
- 加害者側の保険会社との煩雑な交渉や連絡をすべて任せられる。
- ご自身の自動車保険に「弁護士費用特約」が付いていれば、多くの場合、自己負担なく弁護士に依頼できます。
相談のタイミングは、事故直後、治療費打ち切りの打診があった時、症状固定の診断を受けた時など、どの段階でも構いません。不安を感じたら、早めに相談することをお勧めします。
まとめ
交通事故による「むちうち」は、決して軽視すべきではありません。事故直後は症状が軽くても、必ず早期に整形外科を受診し、医師の指示に従って継続的に治療を受けることが大切です。そして、適切な治療や補償を受けるためには、今回ご紹介したような注意点を理解しておく必要があります。
保険会社とのやり取りや後遺障害の申請など、ご自身での対応に不安を感じる場合や、提示された賠償額に納得がいかない場合は、一人で悩まず、交通事故問題に詳しい弁護士にご相談ください。交通事故に強い弁護士が、あなたが正当な補償を受けられるようサポートします。
当事務所ではむちうちのみならず、様々な交通事故でお怪我されてしまった方のご依頼をいただいております。
また、むち打ち症状がなかなか改善せずに後遺症の申請をして、14級9号の後遺症を獲得したり、他事務所で後遺症申請を行ったが認定されなかったため、当事務所で再度の申請を行い、後遺症14級9号を獲得した事例などもございます。
埼玉県内で起きた交通事故、特に当事務所の近くである上尾、桶川、伊奈町、北本、鴻巣、さいたま市、加須市などからは非常に多くのお問い合わせをいただいております。
また、上記の場所に限らず、川口、朝霞、志木、和光、行田、熊谷など埼玉県のあらゆる場所からのご相談・ご依頼を受けております。
ときには、県外からお問い合わせいただくこともあり、茨城や栃木、群馬からのお問い合わせや、ありがたいことに名古屋、大阪、広島、福岡など全国の大都市圏からのお問い合わせをいただくこともあります。
このようなお問い合わせからご依頼をいただくことも多数ございます。
万が一、交通事故でお怪我をされた場合には、池長・田部法律事務所にお問い合わせください。