債権回収

2022/08/25 債権回収

仮差押えを行ったうえで、これまで相手方に貸し付けていた金額1500万円を全額回収した事例

①事例

仮差押えを行ったうえで、これまで貸し付けていた貸付金1500万円を全額回収した事例。

 

②事案の概要

ご依頼者は、当事務所ではなく、市役所相談にてご相談を担当した方でした。

市役所にて無料相談で話を伺ったところ、ご依頼者様は何度も相手方に金銭を貸したことがあり、総額1500万円となるレベルで金銭を貸し付けている状況にありました。

つまり、ご依頼者様は債権者で総額1500万円を相手方である債務者に貸し付けているという状況でした。

ご依頼者様は貸付当初は契約書を作成していなかったようですが、ある時期から現在いくら貸しているのかという現在の貸付金額が分かる借用証や確認書を多数保有していました。

さらに、たまたま相手方の口座情報を有しており、その口座には貸し付けていた金額以上の金額が入金されていることが分かっている状況でした。

ご依頼者様と相手方は普段もよく会う仲でしたし、相手方に貸し付けたお金を返してもらいたいと何度も言っていました。

しかし、相手方は口頭では返すとご依頼者様に言うものの、実際にはお金を返してもらえないという状況にあること、当時貸し付けていた相手は病院に入院しており、家族が事実上口座を管理している状況にあるため、相手方が直接任意にお金を返す見込みも低いという状況であるということが分かり、返してもらえない状況がこれ以上続くと困るということで弁護士に相談に来たという状況でした。

 

③ご依頼後の対応

ご依頼を受けるにあたって、預金の仮差押えという方法を行ったほうが良いのではないかと提案しました。

これは、民事保全手続の一種で、読んで字のごとく口座のお金を仮に差し押さえる手続で、いわば相手のお金を固めてしまい、相手方や相手方の関係者から、口座からお金を引き出されないようにする手続のことです。

今回は、家族が事実上口座のお金を管理していることから、訴訟を提起してしまったり、弁護士が入って交渉を行ってしまうと、金銭をどこかに隠匿し、債権の回収が極めて困難になる可能性があると考えました。

そのため、費用はかかるものの、確実性を期して、預金の仮差押えを行い、万全の体制を整えて本案訴訟を提起することとしました。

仮差押えをするにあたって、現在施設にいることが確実であるということを裁判所に示すため、ご依頼者様ご本人に相手方と施設内でツーショットの写真を撮ってもらったり、施設内にいることを明らかにするために病院内の表札やベッドの名前なども撮影をしてもらいました。

そのうえで債権仮差押えを行い、裁判所が無事に仮差押えを認めてくれました。

なお、口座にもきちんと金銭が入っていたため、安心して本案訴訟の提起に臨めることとなりました。

実は、本案訴訟では、貸し付けた金銭について、時効が問題になりそうであるという事案でした。

相手方の反論を十分に予想したうえでの訴訟提起を行いたいと考え、検討を重ねましたが、今回の訴訟戦略では、時効の主張をつぶすことのできるある証拠のみを訴状提出段階では提出しないという方法をとりました。

テレビなどでは、相手方の証拠を暴くために訴訟の最後で証拠を提出して、相手が驚き、ぐうの音も出ないというシーンを見たことがあるかもしれませんが、実は現実はそうではなく、民事訴訟のルールでは、基本的に証拠は最初に全て出すというのが原則です(民事訴訟法156条)。

しかし、この事件では相手方が時効であると主張してきたときに初めて当該証拠提出するのがもっとも効果的な戦術であるということが分かっていました。

仮にそのタイミングで当該証拠を提出したとしても、裁判所が時機に後れた攻撃防御方法の提出(民訴法157条)として問題視しないレベルでの提出になるだろうということも十分に検討を行ったうえでこの方法を選択し、まさしくぐうの音も出ないような形で解決になるのではないかということで、事件の流れを読みました。

実際に訴訟提起したところ、相手方も弁護士に依頼をしました。

そして、相手方は、まさに読み通りに時効を主張してきたことから、こちらが握ったままの状態である証拠を提出しました。

最後に相手方は苦し紛れに当該証拠について偽造を争ってきましたが、裁判所の心証は、偽造の主張は無理があるのではないかとのことでした。

結局、相手方もそれで折れてしまい、裁判所が和解の勧試を行うこととなりました。

こちらとしては、判決であろうが和解であろうが、ほぼ間違いなくこちらの主張が認められる判断をもらうことができるだろうと思っていましたが、相手方が完全に折れたことから、和解によってよりスピード感ある解決を行うことができると考えたため、和解という方法を選択しました。

そのため、こちらの主張が全面的に認められる形で、勝訴的和解をすることができました。

 

④弁護士のコメント

この事件では、見通しから結果まで完璧に読み間違えることなく、解決をすることができました。

個人的には、金額的にもご事情的にも絶対に負けられない事件であると考えていましたが、結果がきちんとともなって本当に良かったと思います。

きちんと全額回収することができたので、ご依頼者様には非常に喜んでいただけました。

ただし、債権回収の最も難しいところは、法的な手続や主張の構成ではなく、実は金銭が本当に回収できるかどうか、という非常に単純な問題にあります。

今回の事件では、たまたま相手方の口座情報があったことや証拠関係も豊富にあったため、最初から最後まで読みを外すことなく解決に至ることができました。

 

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