2022/08/28 離婚・男女問題
財産分与について特有財産を主張することで、2分の1ではなく希望に沿った分与となった事例
①事例
財産分与について特有財産を主張することで、2分の1ではなく希望に沿った分与となった事例
②事案の概要
ご依頼者様は、離婚することは話し合いで決まっており、問題は財産分与とおっしゃりました。
話を聞いてみると、子の親権については子がほぼ成人を迎えている状態であり、子が相手方の方を親権者と希望している状況で、ご依頼者様も親権は相手方で問題はないとのことでした。
実は、離婚に至る原因は、ご依頼者様の不貞疑いというのが原因のようでした。
よくよく聞いてみると元々夫婦仲も冷めきっており、なおかつ疑われている事実は確かに疑わしく思われてもおかしくないような行動ではあったのですが、本当に不貞行為や不倫ではなく、幅広い友人を探すための活動だったということが分かりました。
離婚の揉め事について話を聞いてみると、離婚に関する基本的な条件は決まっているものの、財産分与に関する条件が定まらず、合意できないため、離婚に踏み切れていないということでした。
また、実は養育費についても若干の争いがあり、相手方から離婚調停を行うと言われたため、相談に来たとのことでした。
③弁護士の対応
今回のケースは財産分与さえ決まれば、結局養育費の問題はさほど問題にはならないだろうとの見通しの下、ご依頼者様の財産の確認を行いました。
そうしたところ、ご依頼者様には、預金、不動産、有価証券などがかなりあることが分かりました。
財産について現金化する必要が出てくるかもしれないと思いましたが、まずは相手方の様子を伺うことにしました。
離婚調停が始まりましたが、相手方は不貞慰謝料請求も行ってきました。
こちらとしては不貞ではない以上、不貞慰謝料については応じないという構えを示して、場合によっては訴訟でもいいという方向で調停を進めました。
紆余曲折はありましたが、最終的に相手方は、不貞慰謝料請求は取り下げる方向で検討するということになりました。
メインの争点は、やはり財産分与に絞られました。
相手方はご依頼者様名義となっている現在の自宅不動産を分与してもらいたい、という強い希望をしていました。
ご依頼者様は不動産の名義を変更すること自体に異議はないが、譲り渡すのであれば一定の現金をもらいたいとの希望がありました。
不動産の時価評価額はかなり高かったのですが、仮に不動産を相手方の名義とするとしても、ご依頼者様がさまざまな財産を保有しており、仮に2分の1ルールが適用されて、手持ちの財産が半分となるとそもそも不動産を譲渡しても、その対価となる現金をもらえない可能性がありました。
しかし、本件では、この不動産をご依頼者様が購入するにあたり、ご依頼者様の独身時代から保有していた株式を売却し、かつ、自分の親から一定の費用を出してもらったということが分かりました。
そこで、特有財産の主張ができれば分与すべき金額を変動することができると考えました。
相手方は、こちらの資産開示も求めていましたが、むしろ財産の開示と特有財産の主張を併せて行うことで、相手方に財産分与の基準となる金額に変動があることを理解してもらえると考えました。
この主張によって、相手方も今回は2分の1ルールに基づく分与ではないという理解ができたのですが、次に当該現金が支払えるかが問題となりました。
しかし、たまたま相手方の親が資産家だったため、相手方の親に費用を捻出してもらえることとなりました。
結局、2分の1ルールを適用すると400万円ほどしかもらえなかった現金が、特有財産の主張により1500万円もらうことができるようになりました。
さらに本来であればご依頼者様が有する他の財産についても一定程度譲り渡す方向も考えられたのですが、これらの名義も全て変更することをせずに財産分与の話し合いがまとまりました。
その結果、ご依頼者様のご希望通り、不動産の名義変更以外全てこちらの名義のままにするという状態で財産分与の合意ができ、離婚調停も成立することになりました。
④弁護士からのコメント
財産分与の考えは原則2分の1ルールが適用されますが、様々な要素が絡み合うことで、このルールの適用ではなく、変動が起きることがあります。
計算も複雑になったり、相手方の保有している財産やこちらが主張すべき特有財産、現在ある資産によってどのように分けるべきかということは大きく変わる余地があります。
財産分与の考えはかなり奥が深いことから、きちんと専門家である弁護士に相談するのが良いと思います。
今回のご依頼者様に、ここまで金額が変わるとは思っていなかったので、依頼してよかったですと言っていただけてよかったです。
余談ですが非常に金額が大きかったので、計算ミスしていたらどうしようと思っていましたが、ミスなく終えることができ、こちらもホッとしたことも大きく記憶に残っています。
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