2022/08/30 刑事事件
電車内で痴漢に間違われて逮捕・勾留されたものの、最終的に不起訴となった事例
①事例
電車内で痴漢に間違われて逮捕・勾留されたものの不起訴となった事例
②事案の概要
ご依頼者様は、朝の通勤途中に電車に乗っていましたが、被害者とされる女性から痴漢を訴えられて、現行犯逮捕されてしまいました。
ご依頼者様の配偶者の方からのご依頼により、本人と接見し、ご依頼を受けることとなりました。
③弁護士の対応
状況を確認したところ、被害者となる女性の左横におり、バッグを手に持っている状況でしたが、客観的には触ろうと思えば触れる状態にはありました。
しかし、記憶は非常に曖昧であり、否認の供述をした場合に、記憶違いなどによって後々公判段階で出てくる客観証拠とのずれが出てくる可能性があります。
そこで記憶違いなどがあった場合に裁判所がご依頼者様の話が信用できないと認定するおそれがありました。
こういった可能性を考慮して、捜査機関に対しては黙秘を行い、裁判で無罪を争うことを想定して準備を進めることとなりました。
勾留に対する準抗告や勾留延長に対する準抗告などを行いましたが、裁判所は釈放を認めてはくれませんでした。
20日経ち、検察官から嫌疑不十分のため不起訴とする、釈放するとの連絡がありました。
弁護人としては起訴されて無罪主張を行おうと考えていましたから、まさか不起訴になるとは思っていませんでした。
ご依頼者様も覚悟を決めている矢先だったので、20日間拘束されましたが釈放されたため非常に喜んでいました。
④弁護士のコメント
痴漢は許されざる犯罪ですが、ときに冤罪というものも存在します。
おそらく痴漢被害自体はあったのだと思います。
今回のケースでは犯人の取り違え、つまり真犯人がいたのだと思います。
しかし、たまたま近くにいたご依頼者様が間違われてしまい、犯人扱いされてしまいました。
被疑者段階で黙秘することの重要性は、捜査機関に証拠を与えないことで、予断をもった捜査を排除することにあると考えています。
今回は黙秘を選択したことで、検察官も非常に慎重に捜査を行うこととなりました。
その結果、実はご依頼者様が犯人ではない可能性があるということに気づいた可能性があります。
もしもご依頼者様が供述しており、その供述と矛盾した客観証拠があったとすると、捜査機関は犯人だからこそ嘘をついて言い逃れしようとしていたのだ、と追及を深めます。
黙秘を選択したことにより、取調べによる追及を回避することができ、自白強要による冤罪を生み出さないことにもつながったと考えています。
その意味でも黙秘対応の重要性を感じた事件でした。
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