刑事事件

2022/09/04 刑事事件

少年の集団暴走、集団リンチ事件で一時的に観護措置を回避し、少年審判で保護観察処分を獲得した事例

① 事例

少年の集団暴走、集団リンチ事件で一時的に観護措置を回避し、少年審判で保護観察処分を獲得した事例

 

②事案の概要

本件は少年事件でした。

少年は、同級生に誘われて、暴走族に加入しました。

当時は暴走族というよりは仲良しグループだったようですが、同級生の1人が暴力団関係者と知り合いで、暴走族の旗揚げを支援していたようでした。

次第に集団は暴走行為を繰り返すようになりましたが、少年はそこまで乗り気ではなく、むしろ一度足抜けしたいと申し出ていました。

しかし、抜けるのであれば決闘しろ、などと言われてしまい、諦め、しばらく暴走行為に参加していました。

ある日、別の暴走族とのシマ争いが勃発しました。

ある暴走族が、少年の参加していた暴走族の暴走エリアに被っているとのことで、トラブルになってしまったようです。

深夜、公園で両暴走族は対峙することになり、一度は話し合いの場が持たれました。

しかし話し合いは決裂してしまい、決闘が行われることになりました。

その際、こちらの暴走族の人数も多く、あちらの暴走族をほぼ一方的に金属バットやメリケンサックなどを用いてボコボコにしてしまい、骨折などかなりの重傷を負わせるという結果となりました。

救急車が呼ばれるなど大事になってしまい、関係者である少年の所属していた暴走族が少年を除き、全員逮捕されてしまいました。

少年は警察に呼出しを受け、親御さんが心配になり、ご相談に来られました。

 

③弁護士の対応

まず、少年以外が逮捕・勾留されていたことから、これ以上口裏合わせをする危険性がないと言えると考えられました。

逮捕・勾留の要件のうち、「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当の理由」(刑訴法60条1項2号)を欠くと主張できるのではないかと考えられました。

また、そのほか、少年は主体的に暴走行為に参加していたわけではなく、集団リンチ行為の主犯格、というわけでもありませんでしたし、学校にもきちんと通っており、親御さんもきちんと監督ができるような環境に整えることが可能とのことでした。

そのため、「逃亡し、又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由」(刑訴法60条1項3号)も欠くものと考えられましたし、「やむを得ない場合でない」(少年法48条1項)とも考えられましたので、万が一逮捕がなされたとしても勾留することがかなり困難になるのではないかと考えられました。

そこで、警察には、逮捕するのではなく、在宅で捜査してもらいたい、との要望書を送付しました。

その後紆余曲折はありましたが、在宅事件で進行することになりました。

しかし、検察官から家庭裁判所に送致される際、監護措置がとられることが想定されました。

そのため、裁判所にできる限り在宅での調査とされたい旨の申し入れを行うことにしました。

もっとも、裁判所は少年が本件犯行の主犯格ではないとはいえ、集団に関与していること、本件の被害者の被害状況が大きいことなどから、監護措置を取る予定と述べました。

ここで、なんとか一時的にでも監護措置による身柄拘束を回避できないか、と考えました。

少年はたまたま受験生ということもあり、大学の説明会などがあるため、一時でもいいから帰宅させてもらいたい旨述べたところ、裁判官にはこれが認められ、一時帰宅し、そのご監護措置をとると言われました。

その後、裁判所との約束の期日に少年とともに再度裁判所に出頭し、身柄拘束手続が行われ、監護措置が取られました。

監護措置後は、少年鑑別所でしか面会ができないため、少年審判まで何度も足を運び、少年と会話をするとともに、今後についてどうしていくのか、暴走族に関与しないような生活をするにはどうすればいいのか、ということを何度も話し合いました。

また、並行して被害者にも接触しましたが、一部の被害者には接触について断られてしまいました。

しかし、一部の被害者の親御さんには接触することができ、示談交渉の後、被害弁償ができることとなりました。

さらに少年審判に向け、家庭裁判所の調査官と2度面談を試み、裁判官とも少年審判前に2度ほど面談を行い、少年の処遇につき調整をしていきました。

裁判官は当初厳しい見通しを述べており、少年院も十分にありうるとの見方を示していました。

一方、被害弁償を行ったうえで、1度目の調査官との調査で発覚した問題点について手当をしました。そして、再度調査官面談に臨んだところ、調査官としても保護観察処分相当という意見を書いてもらえるということになりました。

少年審判では、裁判官の最終的な判断に、調査官の調査は大きな影響を与えるところ、この意見は大きなものとなると確信しました。

さらに、少年審判では親も同席し、裁判官や調査官から質問をうけたりするため、親とも何度も打ち合わせを行い、本件の問題点を共有しました。

2度目の少年審判直前の裁判官の意見もほぼ保護観察相当である旨の内諾を得られました。

そして少年審判に臨み、裁判官が事前に言っていたように保護観察処分となりました。

保護観察処分の理由は、本件主犯格ではないこと、一部の被害弁償を行うことができていること、少年の親の指導・監督に期待できることなど適切な環境調整ができていること、暴走族関係の友人とは関係を断ち切ることを本人が約束していることや本人が大きく反省していることなど更生の可能性が十分にあること、調査官意見も同様の意見であり、保護観察処分が相当との意見であり、当該意見が不適切とは認められず、これを尊重することが適切であり、保護観察処分にすることが相当である、との結論となりました。

 

④弁護士のコメント

本件では、集団の主犯格でなかったところも裁判所は大きく捉えているように感じたものの、裁判官との2回目の面談の際には、被害者との示談大変だったでしょう?調査官の意見もずいぶん柔らかいものでびっくりしましたよ、何したんです?と言われるなど、付添人弁護士に質問される場面もありました。

そのため、事案の性質だけでなく環境調整や被害者との示談成立の有無という点も評価対象としてそれなりのものである、と考えているのかなと感じました。

いずれにせよ、本人も親御さんも少年院だけは回避したい、というご希望だったため、それを叶えることができて良かったと思います。

少年審判に向けての準備は非常に短く感じます。

事実上2週間程度で環境調整や被害者との示談、本人との面接や調査官との面接をしなければならず、これと並行して刑事記録の閲覧謄写作業も行わなければならないため、とにかく足を使うことになります。そのため、他の仕事が一時的に回らなくなるレベルで時間が少ないと感じます。

ただ、少年との会話によって徐々に考え方が変わってきたり、親とのコミュニケーションが健全化していくごとに、喜びを感じます。

少年事件は難しいだけに非常にやりがいを感じる類型です。

池長・田部法律事務所は少年事件も対応しております。

ぜひお問い合せください。

 

当事務所の刑事事件ページはこちら

当事務所のその他の刑事事件解決事例はこちら

 

弁護士ドットコムの犯罪・刑事事件注力ページはこちら(外部サイト)

 

© 池長・田部法律事務所