刑事事件

2025/05/01 刑事事件

性的な動画をばらまかれたなりすまし被害事案において、犯人を特定し、動画削除等を成功させた事例

① 事例

性的な動画をばらまかれたなりすまし被害事案において、犯人を特定し、動画削除等を成功させた事例

② 事案の概要

ご依頼者様は、ある日、知人からの連絡により、X(旧Twitter)上に自分自身になりすましたアカウントが存在することを知りました。そのアカウントは、ご依頼者様の写真やプロフィール情報を無断で使用し、あたかも本人であるかのように振る舞っていました。さらに、過去に個人的な関係にあった人物に送ったプライベートな性的な動画などが、そのなりすましアカウントを通じて不特定多数に販売されていることが判明しました。

ご依頼者様は、自身のプライベートな動画が流出・販売されている事実に強い精神的ショックを受け、名誉や社会的信用が著しく毀損される恐怖を感じました。

当該動画がSNSで販売されており、自分の性的な動画などがどんどん拡散してしまい、止まらなくなってしまうという強い不安をお持ちでした。

まず、いつ、誰が、どのような目的でこのような行為を行っているのか全く見当がつかず、不安な日々を送っていましたが、動画を送ったのが極めて限定的な人物に限られるところ、犯人のめぼしはなんとなくついていました。

ご依頼者様は、この状況を解決し、加害者に責任を取らせたいと考え、インターネット上の権利侵害問題に詳しい当事務所にご相談に来られました。

③ 弁護士の対応

ご相談を受け、当事務所の弁護士は以下の対応を行いました。

  1. 証拠保全: まず、被害の拡大を防ぎ、後の法的手続きに備えるため、なりすましアカウントのプロフィール画面、問題となっている投稿内容、動画販売に関する告知、購入者とのやり取り(もしあれば)などの情報をスクリーンショットやURLの保存等記録の保全をしました。
  2. 刑事告訴: 収集した証拠と特定した被疑者の情報に基づき、名誉毀損罪および私事性的画像記録提供等罪(いわゆるリベンジポルノ防止法違反)の容疑で、所轄の警察署に刑事告訴状を提出しました。告訴状は正式に受理され、捜査が開始されました。弁護士は捜査機関と緊密に連携し、被害状況の詳細な説明、証拠の提出など、捜査に全面的に協力しました。
  3. 被疑者の逮捕・勾留: 警察による捜査の結果、証拠が固まり、被疑者は逮捕され、その後、勾留されるに至りました。
  4. 示談交渉: 被疑者が勾留されている状況下で、被疑者に弁護人がついたので弁護人と示談交渉を開始しました。交渉においては、以下の点を強く要求しました。
    • なりすましアカウントの即時削除(ただし、警察がX(旧Twitter)社に対する捜査をしていた一環で凍結まではいたっていました)。
    • 販売された動画及び関連する全てのデータの完全な削除と破棄
    • 今後一切、被害者に関する情報発信や接触を行わない旨の誓約
    • 被害者が被った精神的苦痛に対する慰謝料を含む示談金の支払い
    • 被害者に対する真摯な謝罪
  5. 示談成立と被害回復: 粘り強い交渉の結果、被疑者側は当方の要求に応じる姿勢を見せました。一方、当初ご依頼者様が希望していた示談金について、被疑者は、経済状況から支払うことが難しいと述べていました。その後家族に相談したようで、一定金額を拠出することができるとの回答がありました。ご依頼者様としては、示談金よりもなりすましアカウント及び関連動画が完全に削除してもらいたい、これをとにかく解決したいとの思いでした。そのため、一定程度の金額が受けられてなおかつ今後の情報伝播がなければ問題ないとのことでしたので、被疑者側から対案として出てきた示談金70万円の支払いを受け、示談を成立させました。これにより、ご依頼者様のプライバシー侵害状態は解消され、さらに精神的苦痛に対する一定の賠償も得ることができました。

④ 弁護士のコメント

SNSにおけるなりすましや、リベンジポルノを含むプライベートな写真・動画の流出・販売は、被害者に深刻な精神的ダメージを与え、社会生活に支障をきたす重大な人権侵害行為です。本件のように、匿名性の高いインターネット上で行われるため、被害者は加害者を特定できず、泣き寝入りしてしまうケースも少なくありません。

しかし、本事例が示すように、適切な法的手段を講じることで、加害者を特定し、その責任を追及することは十分に可能です。ご事情次第ですが、発信者情報開示請求・命令によって加害者の身元を特定し、民事上の損害賠償請求を行うことや、本件のように悪質な場合には刑事告訴を行うことが有効な手段となることは間違いありません。

特に、刑事告訴を行い、捜査機関による捜査、そして逮捕・勾留といった状況に至ることは、加害者に対して強いプレッシャーを与え、その後の示談交渉を有利に進める上でも大きな要因となり得ますし、それと同時にご自身が受けた精神的な苦痛に対してせめてものという金銭的な慰謝につながります。

さらに示談交渉においては、単に金銭的な賠償だけでなく、問題となっている投稿や動画の削除、将来的な加害行為の禁止などを確実に約束させ、将来的な被害を食い止めることが、被害回復にとっても極めて重要です。

インターネット上の誹謗中傷、プライバシー侵害、なりすまし等の被害に遭われた場合、時間が経過すると証拠の収集や発信者の特定が困難になる可能性があります。

お一人で悩まず、できるだけ早く、インターネット問題に精通した弁護士にご相談いただくことを強くお勧めします。

当事務所では、被害者の心情に寄り添いながら、証拠保全から法的措置、加害者との交渉まで、迅速かつ的確なサポートを提供いたします。

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