刑事事件

2025/05/06 刑事事件

性自認から生じるストレスで公然わいせつを繰り返していた事案、原因解明によって不起訴に至った事例

① 事例

性自認から生じるストレスで公然わいせつを繰り返していた事案、原因解明によって不起訴に至った事例

② 事案の概要

ご依頼者様は、幼少期から何かの違和感を感じていましたが、その悩みが何なのか分からずに生活をしていました。

社会人になり、仕事のストレスもあり、どうしてかふと自身の自慰行為を行うことを誰かに見てもらいたいと思うようになりました。

そうして、路上や公園など公共の場所で複数回にわたり、衝動的に自身の性器を露出して自慰行為をする行為(公然わいせつ)を行ってしまいました。

過去にも同様の行為で警察から注意を受けたことがありましたが、今回は通行人からの通報が相次いだことから捜査が進み、ご依頼者様は公然わいせつ罪の容疑で警察の取調べを受けることになりました。

同種の前歴があること、行為を繰り返していることから、起訴される可能性もある状況でした。

ただ、自分の行動を見つめなおしたいと考えていたご依頼者様は精神科などに通った方がいいのか悩んでいた状況でした。

実は、検察官からも一度弁護士に相談したらどうか、などと述べてくれたこともあったため、ご依頼者様は弁護士と相談するに至りました。

弁護士との相談前に、精神科に試しに通院をしてみたところ、ご依頼者様には性同一性障害が存在する可能性が出てきました。

弁護士との相談の中でも、実は、自身の性自認に関する長年のもやもやとした苦悩と、それが今回の衝動的な行為に繋がっている可能性を涙ながらに語りました。

自らの行為がいけないことだとはわかっており、行為自体は深く反省しているものの、なぜ繰り返してしまうのか自身でも理解できず、混乱と強い不安の中におり、その中で性同一性障害と自らの行為が関連しているかもしれないとの可能性が、どこまで刑事事件に影響のあることなのか分からず、ご相談に来られました。

③ 弁護士の対応

  1. 根本原因の深掘りと理解: 弁護士は、ご依頼者様が抱える性自認に関する悩みやストレス、それが公然わいせつという衝動行為にどのように結びついているのか、時間をかけて慎重に聴き取り、理解に努めました。表面的な行為だけでなく、その背景にある根本原因に対処する必要があると判断しました。また、非常に繊細な問題であり、聴き取りについても慎重に慎重を重ね、性同一性障害とご依頼者様の行動がどうつながっていくのかという背景、行動原理を詳しく確認しました。
  2. 専門医療機関との連携: 弁護士は、ご依頼者様が診察やカウンセリングを受け始めている状況から継続した通院と医師の判断についてカルテや診断書の提出や今後の通院計画についての計画書のようなものがあれば作成してもらいたいと述べました。こうして、弁護士もご依頼者様の状態や治療方針について情報を共有しました。
  3. 治療計画と再犯防止策の策定: 専門医の診断や治療が進んでいくにつれて、ご依頼者様の行為が性自認に関する強いストレスや葛藤と関連した衝動制御の問題である可能性が示唆されました。これに基づき、継続的なカウンセリングや、場合によっては薬物療法を含む治療計画が立てられました。弁護士は、ご依頼者様がこの治療計画に真摯に取り組むことをサポートし、再犯防止のための具体的な生活環境の調整(ストレス管理方法の習得、相談できる相手の確保など)を行いました。
  4. 検察官への意見書提出と交渉: 弁護士は、①依頼者の深い反省を示す謝罪文、②専門医による診断書(行為の背景にある精神医学的要因を指摘)及び治療計画書、③治療への真摯な取り組み状況を示す報告書、④これらの事情を総合し、処罰よりも治療による更生が適切であり、再犯可能性も治療によって低減される旨を主張する弁護士の意見書を作成し、担当検察官に提出しました。検察官とは何度も折衝を行い、本件の特殊性と、依頼者が根本原因に向き合い更生しようと努力している点を強く訴えました。
  5. 不起訴処分の獲得: 検察官は、同種前歴や行為の繰り返しという悪情状がある一方で、弁護士から提出された証拠や意見を慎重に検討しました。行為の背景にある性自認に関する深刻な悩み、専門家の意見、治療への取り組みと今後の更生の具体性などを考慮し、本件については起訴を見送り、不起訴処分とすることを決定しました。

④ 弁護士のコメント

公然わいせつ罪を繰り返した場合、通常は起訴される可能性が非常に高くなります。しかし、その行為の背景に、本人の努力だけでは解決が難しい深刻な個人的事情(本件のような性自認に関する悩み、精神疾患、発達障害、依存症など)が潜んでいるケースも少なくありません。

ご依頼者様もこのようなセンシティブなことを話すことは非常に勇気のいることだったと思います。

しかし、このようなご自身が抱えるお悩みを信頼してお話ししていただけたこと、また、弁護士も何度もご依頼者様のことが理解できるように根気強く打ち合わせを重ねることで行動原理を明らかにしていったこと、さらに医療機関に通院し、通院結果や治療計画を理解し、再犯可能性がないことという理屈について説得力を有する意見書を作成できたことは大きな分かれ目になったと思います。

本件のように精神的なお悩みを抱えているケースの場合、単に行為を処罰するだけでは根本的な解決にならず、ご自身でも認識していないような問題が自らの行動につながっていることから、再犯のリスクが残る可能性があります。

重要なのは、行為の背景にある根本原因を解明し、適切な治療や支援に繋げることです。

弁護士は、ご本人の話を丁寧に聴き、必要に応じて精神科医や心理士などの専門家と連携しながら、その原因究明と解決策の提示に努めます。

本件では、依頼者が抱える性自認に関する深い苦悩が衝動的な行為に繋がっていたという背景を弁護士が理解し、検察官に適切に説明を行い、担当検察官の理解を得られたことが検察官の不起訴処分の判断に大きく影響したと考えています。

本件は、これによって最終的に「処罰」ではなく「治療」が優先されるべきである、という弁護士の主張が認められ、不起訴処分という結果を得ることができました。

もし、ご自身やご家族が同様の問題で悩んでおられる場合、刑事事件としての対応はもちろんのこと、その背景にある問題へのアプローチも含めて、経験豊富な弁護士に早期にご相談いただくことが、より良い解決への第一歩となります。当事務所では、個々の事情に寄り添った、最善の弁護活動を提供できるよう努めております。

当事務所では、上尾警察における事件のみならず、大宮警察、浦和警察、川口警察の問題なども埼玉県内の全ての警察署の問題を取り扱っています。

さらに、東京、千葉、神奈川など、埼玉県外の警察署の事案も対応を行った実績がございます。

公然わいせつを行ってしまったら、まずは池長・田部法律事務所にご相談ください。

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