2022/08/28 刑事事件
死亡事故で現行犯逮捕、弁護士の活動により勾留されずに在宅事件となり、最終的に不起訴となった事例
①事例
死亡事故で現行犯逮捕、弁護士の活動により勾留されずに在宅事件となり、最終的に不起訴となった事例
②事案の概要
ご依頼者様は、夜中に自動車を運転していたところ、路上で寝ていた被害者に気づかずに轢いてしまい交通事故を起こしてしまいました。
少しの間、被害者の方をひきづってしまいましたが、自動車の様子がおかしいことから止まって、様子を確認したところ、車の下に被害者の方がいることに気づき、110番通報しました。
警察がその場に来てご依頼者様を逮捕した、という状況でご連絡をいただきました。
③弁護士の活動
ご依頼者様は会社にお勤めの方で、たまたま事件が起きた日は休日でした。
翌日から会社で、勾留されてしまうと重要な仕事に出られないという状況がありました。
翌日に検察庁へ送致されるとのことでしたので、速やかに検察官に対して勾留をしないよう求める意見書を作成しました。
もちろん酔っていなかったとはいえ、死亡事故という重大事故であるだけに勾留請求されるかとも思いましたが、検察官が弁護人の意見書の内容を重視して勾留請求をしないと判断しました。
ご依頼者様は釈放され、会社にも出勤することができました。
そして、引き続き在宅事件として捜査が続行されることになりました。
ご依頼者様は当時自動車を運転してライトもつけていましたが、それでも路上に寝ていた被害者の方に気づかなかったと話し、被害者の方が亡くなってしまったことにひどくショックを受けていました。
もっとも、本当に全く気づかないというレベルであるならば、実は過失運転致死における「過失」が認められないのではないか、ということも十分に検討する必要があると感じました。
そのため、弁護士自ら事件が起きた時間とほぼ同じ時間に事故現場に向かい、他の弁護士などに協力を仰ぐなどして現場検証を行いました。
その結果、その事件現場において、寝ている人がいても自動車からは非常に見えづらく、人が路上に寝ている、という特殊な状況をそもそも予期していないと回避が極めて困難であるという状況が分かりました。
そのため検察官と面談し、事故の現場においては被害者の方を認知して回避することは極めて困難であったことから、本件では過失を認めるに至らないことなどを説明するなど、何度か検察庁にも足を運んだりもしました。
検察官も弁護人の意見を参考にして、何度か現場での検証を行った結果、弁護人の言う通り、過失を認めるのは難しいという結論を出してくれました。
そのため、ご依頼者様は不起訴処分となり、刑事裁判に至ることはありませんでした。
④弁護士のコメント
死亡事故という重大事故でも、弁護士が逮捕段階から弁護することで勾留されない場合があります。
また、自動車で人を轢いてしまったからといって必ずしも轢いてしまった本人に過失があるかどうかは分かりません。
今回のケースでは、現場の状況を踏まえると被害者の方を認識することが極めて困難であった状況もありました。
現場検証の重要性を知る大きな事件であったといえます。
また、死亡事故という結果が重大な事件では、逮捕された時点という事件初期の段階においては検証がきちんとされていない場合がほとんどではないかと思われます。
そのため、本当に運転手に過失があるかどうかは分からない状況にあります。
それにもかかわらず、死亡させてしまったという後悔の念から捜査機関に安易に自白してしまうケースが多い事件類型であるといえるでしょう。
もしも交通事故で人を轢いてしまった場合には、ご家族からでも結構ですので、弁護士に連絡することを強く薦めています。
なお、一部の保険会社では刑事事件の加害者側となってしまった場合でも弁護士費用特約が使える場合がありますので、弁護士に依頼する前に保険会社に確認してみてください。
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