刑事事件

2022/09/25 刑事事件

特殊詐欺事件において実刑となってしまったものの、量刑相場に比し減刑された事例

①事例

特殊詐欺事件において実刑となってしまったものの、量刑相場に比し減刑された事例

 

②事案の概要

本件は国選弁護事件として担当した事件でした。

ご依頼者様は、知り合った人のツテでキャバクラの経営を手伝ってもらえないか、と誘われて、キャバクラの営業を手伝うようになりました。

しかし、実はそのキャバクラは暴力団の傘下にある店舗でした。

ご依頼者様はそれを知りませんでしたが、あるときにそれを知り、辞めようと思い、オーナーに辞めると告げて、店舗を出て行きました。

しかしその後、路上で拉致され、当該キャバクラの店舗に押し込められて、顔が腫れるまでリンチされて、このままバイバイするか、詐欺するか選ぼうか?と言われ、無理矢理特殊詐欺の片棒を担ぐことになりました。

何件か成功しましたが、ある一件が詐欺を見破り、警察に通報していたところ、警察から待ち伏せされており、詐欺未遂の現行犯で逮捕されたという事案でした。

③弁護士の対応

接見に行き、話を聞いたところ、余罪が複数件存在しているため、このまま全てを話して自白するとなると、おそらくこれから何度も追起訴がなされて、10件以上の裁判となり、懲役7年〜10年は見るべき極めて重い量刑になると考えました。

そのため、ご依頼者様にその旨お伝えして、このまま正直に白状するという方法と黙秘を行うという方法の二択であるが、量刑が極力少なくなる可能性があるのは黙秘を選択することだと思う、と述べたところ、ご依頼者様は黙秘を選択することになりました。

なお、被害者の方々には示談も検討したのですが、金額が極めて多いためそもそも示談できる可能性が低かったことに加え、親族と事実上折り合いがついていないということもあり、示談の原資を確保できないという問題点もありました。

そのため示談という方法を取れない以上、量刑を少しでも軽くするには、徹底的に捜査機関に自らの供述を取られないようにするという戦術を取らざるを得ませんでした。

はっきりいって捜査機関に反省しているということを話しても正直量刑にとってはほとんど影響がありません。

罪を認めて反省しているという態度は公判、つまり裁判の中で示すことができれば良いので、裁判で真実を話すという方向で捜査中は全て黙秘を徹底しました。

公判においては、当初の方針通り、罪を全面的に認めて謝罪と反省の態度を示しました。

また、時間がかかりましたが、弁護人を通じて父親との関係が改善したため、父親が情状証人として裁判に出てくれることになり、裁判で将来父親がご依頼者様を監督することを誓ってくれました。

またご依頼者様本人としては詐欺は自ら積極的に参加しようとしていたわけではなく、死ぬか詐欺をするか選べ、と命の選択を迫られた結果始めたものであり、その犯情には一定の酌量の余地がありました。

検察官の求刑は実刑4年でしたが、裁判所の判決は実刑2年8月となり、未決勾留日数は約90日もらうことができました。

 

④弁護士のコメント

本件は最終的に全部で4つの罪が起訴され、その被害額は合計で500万円を超えており、求刑が5年であってもおかしくはない状況でした。

しかし、本件の犯情などを考慮して検察官も求刑を少し下げて4年としたように感じます。

ご依頼者様本人には、追起訴が全て終わった時点の当初の見込みで4年〜5年の実刑になる可能性があると話していました。

最終的に裁判所は2年8月という判決をしましたからかなり色々な要素を考慮してこの結論を出してくれたと思います。

また、未決勾留日数も踏まえるとかなり短い刑期で出てこれるという結論になりました。

検察官の求刑が4年であるならば、裁判所は3年以上の判決とすることが多い中、それよりも下回る判決となりました。

弁護人はかなり長期間に渡り、本件にお付き合いしましたが、父親との関係の改善については、ここには書ききれないほどに色々なことがありました。

紆余曲折を経てなんとか裁判の場に立ってもらうことができ、本件においては、裁判所の量刑に影響を与える1つの要素であったと感じています。

弁護人という立場は、少しでも被疑者被告人の社会復帰を支援するためにできる限り量刑を小さくすることが、ある種の職業的使命であると言えます。

そのためには、仲が決裂していた親子の関係を取り持つことも役割の一つですし、今回はできませんでしたが、示談を行うことなどもその役割の一つといえます。

特殊詐欺は初犯でも原則実刑という極めて重い罪であり、当然ですが関わらないに越したことはありません。

しかしながら、万が一やむなく特殊詐欺に関わってしまった場合には、弁護人を通じて示談ができないか、示談ができずともなんとか他の方策でできる限り量刑を小さくできないかということを考えます。

刑事弁護においてはどのような戦略をもって捜査段階の弁護を行うか、また公判段階での弁護を行うかということを短期的な目線だけでなく長期的な目線でも見据える必要があります。

そのため、刑事弁護の経験が豊富でない弁護人がついてしまうと見通しが全く違うものになってしまうこともあります。

もしも、特殊詐欺に巻き込まれてしまった場合には当事務所にご相談ください。

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