刑事事件

2022/08/30 刑事事件

特殊詐欺事件について、保釈に成功し、なおかつ実刑を回避して執行猶予を獲得した事案

①事例

特殊詐欺事件について、保釈に成功し、なおかつ実刑を回避して執行猶予を勝ち取った事案

 

②事案の概要

国選弁護事件にて担当が回ってきた事件でした。

ご依頼者様も認めており、被害者の人が本当にいい人だった。あんな人をだましたくなんかなかった。謝罪をしたいと非常に強い後悔の念を抱いていました。

特殊詐欺にかかわった経緯は、安易にお金を入手できる裏バイトがあるからそれに応募してみたとのことでしたが、それが特殊詐欺の入り口だったのです。

自分の身分証明書の写しを送ってしまっていて、今から辞めたら家に行く、家族に何があるかわからないと言って暗に脅されもしていました。

そのため、詐欺被害者の下に行きキャッシュカードを受け取るいわゆる受け子と、そのキャッシュカードを利用して現金を引き出す出し子を担当することになりました。

受け子、出し子ともに成功したものの、すぐさま警察にバレてしまい、家に警察が来て逮捕されるということになりました。

 

③弁護士の対応

被害から日数が経っていませんでしたし、すぐさま被害弁償をということであれば、被害者の方が示談に応じてくれるかもしれないと考えました。

そこで、まずは、本人から親御さんの連絡先を聞き、親御さんとコンタクトをとったところ、子どもがバカなことをしたのは親の責任です。全額払いたいと考えています、ということで、金額的には全額の被害弁償ができる可能性がありました。

被害者の方は騙されたという感情が強かったため、弁護士からの電話にも非常に猜疑心を有していましたが、検察庁を通じて連絡先を開示していたことから、少なくとも話は聞いてくれていました。

何度かお願いしたところ、お金が返ってくるのであれば構わないという話になり、示談することができました。

示談はできたものの、その時点では釈放されることがなかったため、弁護士から勾留に対する準抗告申立ては棄却、勾留取消請求も却下されてしまいました。

その後、検察庁としても、特殊詐欺事案は社会的に許容される罪ではないことから示談されていてもなお起訴すべきとの考えの下、起訴に至り、公判が開かれることとなりました。

起訴された時点で、ご依頼者様は被疑者という立場から被告人という立場になりました。

保釈請求はこの時点から行うことができるようになりますが、一方で、様々な事情から第1回公判期日まで保釈が認められない可能性もありました。

実際に第1回公判期日前において保釈請求を行ったものの、条件が整わず保釈は通りませんでした。

保釈請求却下に対する準抗告も行いましたが、実際に示談しているだけではなく、少し本人が特殊な環境に置かれていたことを考慮されてしまい、準抗告は棄却されてしまいました。

しかし、第1回公判期日が終わり、再度保釈請求を行ったところ、証拠隠滅の可能性がないと判断され、保釈が許可されました。

そのため、保釈金を納めて、ご依頼者様は釈放されました。

特殊詐欺事件においては、示談ができていてもなお実刑になるケースがあると聞きますし、ましてや示談ができていなければ実刑は不可避です。

第2回公判期日において、示談していること以外に、家族の監督や今後の生活について更生に向けた具体的な意見を述べたうえで反省していることを掲げ、被害者の方に充てた謝罪文も証拠提出しました。

その甲斐あってか、裁判所は特殊詐欺事件であるが、示談が成立し、さらに早期に被害回復がなされたこと、家族の監督が期待でき、被告人も反省していることから、社会内で更生の機会を与えるべきとの弁護人の意見が採用されて、判決に執行猶予が付されました。

 

④弁護士からのコメント

池長・田部法律事務所では国選弁護であっても決して力を抜いたりはしません。

本件では特殊詐欺という社会的に重大な犯罪であると認識されている事件であり、本件は、十分に能性が実刑の可能性がある事件でした。

また、特殊詐欺事件では親さえ面会できない接見禁止が付されることが多く、実際に本件でも接見禁止が付されていました。

親御さんが警察からかなり遠いところに住んでおり、先行して被害者との示談を行ってほしいとの親子の要望もあったため、優先順位を下げさせていただきましたが、その甲斐あって、速やかに示談をすることができました。

示談後に接見禁止処分に対する準抗告申立てを行い、認容され、親子の面会は実現しました。

また、示談はしていたとはいえ、起訴される可能性があり、なおかつ実刑の可能性が残されていたことから、公判における弁護人立証の可能性を視野に入れ、できる限りのことを行うことにしました。

示談だけではなく、引き続き被害者とのコミュニケーションを行い、謝罪を続けたり、親子ともども本人が次から特殊詐欺事件に関与しないようにするにはどのようにすればいいか、というのを綿密に打ち合わせました。

これらを行いつつ、裁判所に執行猶予が適切であるという弁論を用意し、公判当日読み上げ、提出を行いました。

判決では、示談だけではなく、綿密な打ち合わせに基づく具体的な更生計画や本人の具体的な反省の弁を強く評価してもらうことができ、これが執行猶予につながったと考えています。

もちろん示談を行うことができたというのは大きかったですが、これらの活動も非常に重要だと実感した事件です。

特殊詐欺事件だけではないですが、特に逮捕・勾留など身柄拘束されている刑事事件はスピード感をもって、対応していくことが重要です。

また、見立てを誤って弁護を開始してしまうとあとで取り返しのつかない事態になりかねません。

その意味では、刑事事件の流れや見立てについて、詳しい弁護士を選ぶべきです。

池長・田部法律事務所では、弁護士池長・田部ともに大手法律事務所で民事・刑事ともに件数を多く担当するとともに、研鑽を積んでまいりました。

特殊詐欺のような事案であっても弁護の対応が可能ですので、もしも弁護の必要性を感じましたら、ぜひお声がけください。

 

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