2025/05/01 刑事事件
隣人が、突然家に侵入してきた住居侵入被害において、転居、引越費用等含め70万円で示談した事例
① 事例
隣人が、突然家に侵入してきた住居侵入被害において、転居、引越費用等含め70万円で示談した事案
② 事案の概要
ご依頼者は、深夜、自宅アパート内で玄関が開く不審な物音を聞きつけ確認したところ、隣室に住む方と名乗る方が突如ご依頼者様宅に侵入してきました。
ご依頼者様は、最初に「なんですか?」と聞きましたが、相手方は「ここ自分の部屋ですよね?」などと言っていたものの、そのうちに「今時間ありますか?」などとご依頼者様を誘うような言葉を述べました。
ご依頼者様は強い恐怖を感じましたが、冷静に、「とりあえず今は忙しいので一旦出て行ってもらってもいいですか?」などと述べて、隣室の方を追い出すことに成功しました。
その後、ご依頼者様は警察に通報して、隣室の方は住居侵入罪の現行犯逮捕されました。
事件発生後、隣室の方について弁護人を通じて、隣室の方は「部屋を間違えた。」などと述べて、間違ったことに対する謝罪はあったとのことでしたが、明らかに不審な行為をしていたことについては当初謝罪がなく、また賠償金に関する話もありませんでした。
ご依頼者様は今回の事件により強い精神的ショックを受け、隣人がすぐ近くに居住している状況では安心して生活できないと判断し、転居を決意しました。
しかし、転居には敷金・礼金、仲介手数料、引越し代などの費用がかかるため、その負担を加害者である相手方に求めたいと考えるとともに、自分では弁護人との交渉について対応できないと感じ、親御さんとともに当事務所にご相談に来られました。
③ 弁護士の対応
依頼を受けた弁護士は、詳細な被害状況と精神的な苦痛の程度、転居の意思などを丁寧にヒアリングしました。
その上で、改めて、隣室の方の弁護人に対し、連絡を行って示談交渉を開始しました。
示談交渉においては、相手方の住居侵入という行為の悪質性、それによりご依頼者様が受けた精神的苦痛(恐怖心、不眠、日常生活への支障など)、そして住居侵入時の不審な言動があったため、このまま隣室に戻ってくるようなことがあるなら怖くて住むことができないために、慰謝料に加え、転居にかかる実費(新居の初期費用、引越し業者費用など)を算出し、合計120万円の損害賠償(示談金)を請求しました。
隣室の方の弁護人は当初、賠償金を支払うことは難しいなどと述べていましたが、住居侵入についての態様や犯行状況から相当に性犯罪に類似する点を指摘して、公判請求される可能性も含めて再検討してもらいたいと述べました。
それでも弁護人は、本人が金銭的に資力が乏しいことから金額の減額を求めてきましたが、弁護士は、ご依頼者様の被害感情の強さや、転居しなければ平穏な生活を取り戻せない状況であることを粘り強く説明しました。
また、刑事手続きへの影響(起訴された場合の不利益など)も示唆しつつ交渉を進めた結果、最終的に隣室の方が70万円も準備することが難しいが分割であれば支払うと述べたため、一定の頭金を前提にご依頼者様の引っ越し費用の見積もりなどと勘案し、当該金額で示談を成立させることとしました。
示談書には、示談金の支払いに関する事項のほか、隣室の方が今後ご依頼者様に一切接触しないこと(接触禁止条項)なども明記し、将来的な紛争の蒸し返しを防ぐ措置を講じました。
④ 弁護士のコメント
住居侵入は、被害者の最もプライベートな空間である住居の平穏を侵害する、極めて悪質な犯罪です。
被害者が受ける精神的苦痛は甚大であり、特に本件のように加害者が隣人である場合、事件後も恐怖心や不安感が拭えず、転居せざるを得なくなるケースは少なくありません。
このような場合、精神的苦痛に対する慰謝料だけでなく、事件が原因で必要となった転居費用(新居の契約費用、引越し代など)を加害者に請求することは、法的に正当な権利として認められる可能性があるといえます(引っ越し代については認められない場合もそれなりにあります。)。
示談交渉を有利に進めるためには、被害の実態や精神的苦痛の程度を具体的に主張し、損害額を客観的な証拠(診断書、転居費用の見積書・領収書など)に基づいて算定することが重要です。
また、加害者との直接交渉は被害者にとって更なる精神的負担となることも多いため、早期に弁護士にご相談いただくことをお勧めします。
もちろん被害に遭われたことについて感情的にならない被害者の方はいないと思います。
しかし、感情的になりすぎてしまうことで、せめてこのときに賠償金だけでも受け取っていればという事案は少なくありません。
弁護士が被害者代理人として交渉することで、冷静かつ法的な根拠に基づいた主張を展開し、ご自身の後悔が残らないように適正な示談金の獲得を目指すことや、将来のトラブル防止のための適切な示談条件(接触禁止など)の設定を目指すことができます。
なお、被害者の方については、一定の条件の下、被害者援助の制度を利用することができ、その結果として弁護士費用の負担が実質的に発生しない場合もあるといえます(当事務所でも実績が多数あります。)
一般的にご年齢が若い女性の方などは、自分の収入や貯蓄が乏しく、弁護士に依頼できないと思って、泣き寝入りに至ってしまうこともあります。
しかし、弁護士に上記のような制度を利用してご依頼をできる事さえ知っていれば、そのような事態を防ぐことができます。もっとも、当該制度を利用して被害者の方の依頼を受けている事務所は非常に少ないようです。当事務所ではむしろ積極的に被害者の方のご依頼に対してご対応をさせていただいております。
池長・田部法律事務所では、このような住居侵入事案や住居侵入とよく関連がある性犯罪絡みについて、上尾警察署の管轄のみならず、大宮、浦和、岩槻、朝霞、蕨、川口、新座など種々の警察署の対応をしています。また、被害に遭った場所が埼玉県外、東京、千葉、神奈川であったり、栃木、群馬、茨城の事案もご対応をさせていただいた実績がございます。さらに、福島県、岩手県、青森県、大阪府、広島県など埼玉県外で被害に遭われた方のご対応もさせていただいた経験がございます。
犯罪被害に遭われた方は、ぜひ一度池長・田部法律事務所にお問い合わせください。
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