離婚・男女問題

2025/05/03 離婚・男女問題

婚姻費用月額8万円を請求されていたが、月額3万円に減額され、即時抗告も認められなかった事例

① 事例

婚姻費用月額8万円を請求されていたが、月額3万円となり、即時抗告も認められなかった事例

② 事案の概要

別居をした夫婦間において、別居後1年後に配偶者(妻)が依頼者(夫)に対して、弁護士を通じて月額8万円を支払うように通知書を送付してきたという事案です。

ご依頼者様はちょうど定年退職になったことから、今後再雇用が見込まれているものの、収入が大きく下がるということを心配していました。

法律上決まる額ならば仕方がないが、本当に相手方が主張している金額が正しいのか疑問に思ってこちらも弁護士を入れたいというご要望でした。

直感的に相手方弁護士が主張している金額がおかしいと感じたことから、ご依頼者様には婚姻費用に対する考えや対応方法に対するご説明を行った上で、ご依頼をいただくことになりました。

③ 弁護士の対応

相手方は、すでに婚姻費用分担調停を提起していましたので、調停の対応となりました。

1.収入の確認(基礎収入)の確認:妻の収入と依頼者の収入について確認をしようとしました。依頼者は源泉徴収票があり、再雇用後の収入について、再雇用の雇用契約書や会社の説明書など、給与が下がる合理的な資料をいただくことにしました。妻は知り合いのところでバイトをしているということでなおかつ最低賃金を下回る形で手伝いをしているという話で、客観資料はありませんでした。

2.既払い金の確認:妻は夫名義の住宅に居住していたため、生活費の一部を負担していないか確認しました。水道代、ガス代、電気代などの公共料金や妻が使用している自動車保険の金額などを確認しました。

既払い金があると、大きな枠として決められた婚姻費用から差し引くことができる場合があるからです。

上記2点を確認して、調停や審判では基礎収入認定において妻の収入が実額か否かの問題と依頼者の妻に対する既払い金について婚姻費用の支払いの一部として認定することができるか否かという問題が争点になると考えました。

そこで、法的な主張として、妻の収入は実額ではなく賃金センサス(統計上の収入、約400万円)を使用すべきであること、仮にパートをしていると仮定してもおおよそ120万円は収入を得ているはずであること、実額で認定するとしても最低賃金を下回る違法な収入である以上、これを基準にすべきではない、と基礎収入の認定では主張を行いました。

また既払い金は全て考慮されるべきであり住居を利用している利益分があると主張しました。

調停では妻側との折り合いが合わず、家庭裁判所の審判手続に移行しました。

そして、家庭裁判所の審判においては、基礎収入について少なくとも妻は一般的なパートをしているものと同等の収入が認められるべきであるとの認定がありましたが、既払い金の主張は明示的には認められませんでした(ただ、この主張も一応の考慮はされていました。)。

その結果、月額3万円の婚姻費用であると認められました。

なお、妻側は即時抗告を行い、高等裁判所(高裁)抗告審が行われましたが、やはり妻側の主張は認められず、家庭裁判所の決定が維持されました。

妻側は上告せずに家庭裁判所の審判での決定が確定しました。

その結果、相手方は月額8万円を請求していましたが、ご依頼者様が支払うべき婚姻費用は月額3万円と月額5万円の減額に成功しました。。

④ 弁護士のコメント

婚姻費用分担請求は、婚姻費用分担算定表(標準算定表)を利用すればざっくりした形では請求可能です。

しかし、実はそもそもこの算定表を読む上で、前提となる収入の金額が異なる、とか、すでに支払っているはずの額は考慮されるはず、などといった専門的な主張はなかなかすることができません。

本件では、当方の主張が全面的に認められれば月額0円と評価しうる事例でした。

しかし、裁判所が当方の主張を全面的には認めなかったため、ここは非常に残念に思います(ただ裁判所の立場として、婚姻費用0円と決定を出すということは感覚的に非常に難しい気がするというのは理解できるところではあります)。

本件では、ご依頼者様に対し、様々なご説明を行いましたが、ご依頼者様が裁判所が決めた金額なら多少気になるポイントがあるとしても多少は支払いたいとお話しいただいていたことから、積極的に不服申し立てまでは行いませんでした。

しかし、月額1万円変われば年間だと12万円変わりますし、本件のように月額5万円変われば年間で60万円変わります。

本件のご依頼者様のようにきちんと熟慮した上での結論ならいいですが、基本的に私たちは安易に月1万円だからそれなら妥協していいかと考えるべきではなく、1万円であってもできる限りはこだわるべきであると考えています。

仮に相手に弁護士がついていたとしても相手方が法的に正しい主張をしているかはわかりません。

本件でも、実はかなり法的に突き詰めていく争点などもあったために、実は簡単に解決できる分野でもないということがよくわかる事例でした。

婚姻費用の問題はご依頼することで結果がかなり変わりうる分野であると強く感じています。

池長・田部法律事務所では婚姻費用を請求する側のご依頼も婚姻費用を請求された側のご依頼もいただいており、非常に多数のご依頼をいただいております。

埼玉県内の問題のみならず、関東圏(東京、神奈川、千葉、群馬、栃木、茨城)の問題もお取り扱いが多数あります(特に埼玉以外では現時点では東京と茨城の事案をよく取り扱っている状況です。)。

また、福岡県や青森県など、日本全国の婚姻費用の問題について取り扱いが可能です。

最近では家庭裁判所の問題についても電話やWEBでの対応を行ってくれる裁判所がかなり多いですから、埼玉にある事務所だから依頼しづらいということもなくなってきました。

お近くの法律事務所で、婚姻費用だけでなく、養育費など皆様の生活に直結する問題に精通している弁護士がいれば問題ないですが、そのような弁護士がいないならば、ぜひ池長・田部法律事務所にご相談・ご依頼ください。

 

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