債権回収

2025/12/01 債権回収

職場内で複数人からセクハラを受け、休職。加害者らに損害賠償請求を行って全員から賠償金を得た事例

①事例

職場内で上司や同僚ら複数名から日常的にセクハラを受け、精神的苦痛により休職を余儀なくされた事案において、弁護士が介入し、加害者全員に対して損害賠償請求を行い、全員から慰謝料の支払いを獲得した事例。

②事案の概要

依頼者(20代女性・会社員)は、配属された部署において、直属の上司および男性同僚数名から、日常的に性的な冗談を言われる、容姿について「かわいいね」などと言われ、肩や髪の毛など体に触れられるなどのセクハラ被害を受けていました。

職場全体に「これくらいはコミュニケーションの一環」という歪んだ雰囲気があり、依頼者がそれとなく拒絶しても気づいてもらうことができず行為がエスカレートする状況でした。依頼者は誰にも相談できずに我慢していましたが、次第に不眠や動悸などの症状が現れ、心療内科で適応障害と診断され、休職せざるを得なくなりました。

会社の人事部に相談をして、会社内においてはセクハラ被害であると認定を受けることとなりました。

会社を休んでいる間、依頼者は「なぜ自分だけが苦しまなければならないのか」「加害者たちが許せない」という強い思いを抱き、泣き寝入りせずに責任を追及したいと考え、当事務所にご相談に来られました。

③ 弁護士の対応

  1. 証拠の精査と加害者の特定: 弁護士は依頼者から詳細なヒアリングを行い、誰が、いつ、どのような発言や行為を行ったかを時系列で整理しました。幸い、依頼者は一部の同僚からのセクハラ発言を含むLINEの履歴や詳細な被害メモを保存していました。これらを精査し、特に悪質な行為を行っていた主犯格の上司と同僚3名、計4名を請求対象として特定しました。

  2. 内容証明郵便による請求: 弁護士は、加害者4名それぞれに対し、弁護士名義でメールを送付しました。書面では、それぞれの具体的な加害行為(セクハラ事実)を指摘し、それらが不法行為に該当すること、依頼者が精神疾患を発症し休職に至ったこととの因果関係を主張し、慰謝料の支払いを求めました。

  3. 個別の示談交渉: 加害者らからは謝罪がありましたが「冗談のつもりだった」「そこまで傷ついているとは思わなかった」「他の人もやっていた」などと責任を転嫁したり、矮小化したりする態度を見せました。しかし、弁護士は「集団心理による無責任な行為こそが悪質である」と断じ、確保していた証拠を突きつけて、法的手続(訴訟)も辞さない強硬な姿勢で交渉を行いました。

  4. 全員からの賠償金獲得: 粘り強い交渉の結果、加害者4名全員が自身の行為の違法性を認め、謝罪に応じました。それぞれが行った行為の悪質性や頻度に応じた金額の慰謝料を支払う内容で示談が成立しました。また、示談書には、今後依頼者に対して接触しないことや、口外禁止条項(この件を他言しないこと)も盛り込ました。依頼者は職場復帰を望みませんでしたので、退職後の生活の平穏も確保しました。

④ 弁護士のコメント

本件ではご依頼いただく段階で多少は加害者らが金銭的賠償を行ってきそうな状況も見受けられたためうまく回収を行うことができました。

職場におけるセクハラは、加害者が一人の場合だけでなく、本件のように「職場の雰囲気」として複数人が加担しているケースが少なくありません。このような「集団セクハラ」の場合、加害者一人ひとりの罪悪感が薄れやすく、「みんなやっているから大丈夫」とエスカレートする傾向があります。

被害者の方は「多勢に無勢」と感じ、声を上げることすら諦めてしまうことが多いですし、回収の見込みもあるかどうかもわからないという状況で泣き寝入りする方も多いかと思います。

ただ、法的には、加害者一人ひとりが自身の行った行為に対して責任を負う義務があります。

本件のように、複数の加害者がいる場合でも、弁護士が介入し、証拠に基づいて一人ひとりの責任を個別に追及することで、言い逃れを許さず、正当な賠償金を支払わせることが可能です。

セクハラ被害により休職や退職に追い込まれてしまった場合、その精神的・経済的苦痛は計り知れません。泣き寝入りせず、まずは弁護士にご相談ください。あなたの尊厳を守り、正当な権利を回復するために全力を尽くします。

© 池長・田部法律事務所