コラム

2025/05/08 コラム

もしも家族が逮捕されたら…?動揺せずに行動するために知っておくべきこと

はじめに

「〇〇警察署ですが、ご家族の△△さんを逮捕しました」――ある日突然、こんな連絡を受けたら、誰しも気が動転し、強い不安に襲われることでしょう。「これからどうなるのだろう」「何をしてあげられるのだろうか」と、頭が真っ白になってしまうかもしれません。

しかし、まず知っておいていただきたいのは、逮捕はあくまで捜査の第一段階であり、それ自体が有罪を意味するものではないということです。このような緊急事態だからこそ、ご家族が少しでも冷静さを保ち、適切な初動をとることが、逮捕されたご本人にとって非常に重要になります。

このコラムでは、ご家族が逮捕・勾留された場合に、どのような手続きが進むのか、そしてご家族として何をすべきか、どのような点に注意すべきかを解説します。

逮捕された後の流れ(刑事手続の概要)

逮捕は、身柄を拘束する処分であり、裁判官の令状に基づく「通常逮捕」、犯行中や直後に行われる「現行犯逮捕」、重大犯罪で令状請求の時間がない場合の「緊急逮捕」があります。いずれの場合も、逮捕後の手続きは以下のように進むのが一般的です。

  1. 逮捕(最長72時間):

    • 警察での取調べ(最長48時間): 逮捕後、警察署で取調べを受けます。この期間は、原則として弁護士以外は本人と面会(接見)できません。
    • 検察官送致(送検): 警察は48時間以内に、事件と身柄を検察官に引き継ぎます(送致)。
    • 検察官による取調べ(最長24時間): 送致を受けた検察官は、24時間以内に本人から話を聞き、引き続き身柄拘束が必要かどうかを判断します。ここで「勾留請求」をするか、「釈放」するかが決まります。
  2. 勾留(原則10日間、延長でさらに最長10日間=合計最長20日間):

    • 検察官の勾留請求が裁判官に認められると、原則として10日間、身柄拘束が続きます(警察署の留置施設や拘置所など)。この期間を「勾留」といいます。
    • 捜査が続行され、検察官は勾留期間の延長(さらに最大10日間)を請求することができます(勾留延長)。
    • この勾留期間中(逮捕から最大23日間)に、検察官は本人を起訴するか、不起訴にするかを最終的に決定します。
    • 勾留期間中は、原則としてご家族も面会が可能になります(ただし、後述の「接見禁止」が付いている場合を除く)。
  3. 起訴・不起訴:

    • 不起訴処分: 証拠不十分、嫌疑なし、または起訴猶予(罪は認めるが起訴は見送る)などの理由で起訴されない場合、身柄は釈放され、事件は終了します(前科はつきません)。
    • 起訴処分: 検察官が刑事裁判にかける必要があると判断した場合、「起訴」されます。起訴には、正式な裁判を開く「公判請求」と、簡易な書面審理で罰金刑を求める「略式請求」があります。起訴された後も、保釈が認められない限り、身柄拘束(起訴後勾留)が続くのが一般的です。
  4. 刑事裁判:

    • 公判請求された場合、裁判所で刑事裁判が開かれ、証拠調べや弁論を経て、裁判官が有罪か無罪か、有罪の場合はどのような刑罰(懲役、禁錮、罰金など)を科すかを決定します。

※上記は法律上の最大期間であり、事案によってはもっと早く釈放されたり、手続きが進んだりする場合もあります。

ご家族としてまずやるべきこと

突然の知らせに動揺する中で、ご家族が取るべき行動は以下の通りです。

  1. 情報の収集:

    • 逮捕されている場所の確認: まず、ご本人がどこの警察署にいるのかを、連絡してきた警察官、または最寄りの警察署に問い合わせて確認します。
    • 逮捕容疑(罪名)の確認: 何の疑いで逮捕されているのか(被疑事実)を、可能な範囲で確認します。
    • 担当者の確認: 可能であれば、担当している警察官や検察官の部署、氏名、連絡先を聞いておきましょう。
  2. 弁護士への相談・依頼(最優先!):

    • 逮捕されたご本人にとって、最も重要で、一刻も早く行うべき行動が弁護士への相談・依頼です(初回接見)。 逮捕直後から弁護士が接見し、適切なアドバイスを行うことで、不利な供述調書の作成を防いだり、早期釈放や不起訴処分の獲得に向けた活動を開始したりできます。ご家族が本人に代わり独自に弁護人を依頼することも可能です(当事務所では、弁護を依頼する前に接見を行って本人の話を踏まえてご家族が依頼をするか判断するための緊急接見プラン(有料)もございます。)。
    • 当番弁護士制度: 逮捕された本人が警察官に依頼すれば、1回無料で弁護士が接見に来てくれる制度です。ただし、自分で弁護士を選ぶことはできません。
    • 私選弁護人: ご家族などが費用を負担して、刑事事件に詳しい弁護士を選んで依頼する方法です。逮捕直後から継続的にサポートを受けられ、ご家族との連携も密に取れるため、可能であれば私選弁護人の選任を強くお勧めします(現行制度上は、逮捕された段階では国選弁護人がつくことは絶対にありません。72時間以内に動けるのは私選弁護人しかいません。この初動が後に大きな分かれ目になることもありうるため、この時間にご家族がまごついてしまうことは非常にもったいないといえます。)
    • 弁護士費用については、相談時に遠慮なく確認しましょう。
  3. 本人への差し入れ:

    • 留置場での生活に必要な現金(上限あり)、着替え(紐や金具がないものなど制限あり)、本や雑誌などを差し入れできる場合があります。
    • 差し入れ可能な物品や手続き、受付時間などは、留置されている警察署によってルールが異なりますので、事前に電話などで確認が必要です。
  4. 会社や学校への連絡(細心の注意を!):

    • ご本人が会社員や学生の場合、無断欠勤・欠席が続くと不利益(解雇や退学など)につながる恐れがあります。連絡自体は必要になることが多いでしょう。
    • しかし、「逮捕された」という事実を伝えるかどうか、どのように伝えるかは非常にデリケートな問題です。 事実と異なる説明をしたり、不用意に逮捕の事実を広めたりすると、かえって本人の立場を悪くする可能性があります。必ず弁護士に相談し、指示を受けてから対応するようにしてください。

ご家族ができるサポートと注意点

捜査や裁判が進む中で、ご家族ができるサポートや注意すべき点は以下の通りです。

  • 本人との面会(接見):
    • 勾留決定後は、原則として、平日の日中(警察署ごとに時間は異なります)に1日1回、15~20分程度の面会が可能です(予約が必要な場合あり)。
    • ただし、証拠隠滅や共犯者との口裏合わせの恐れがあると判断された場合などには「接見禁止」の決定が出され、弁護士以外は家族であっても面会できなくなることがあります(手紙はOKなケースや逆に面会のみOKのケースなどもあります。)。
    • 面会には警察官が立ち会い、会話内容がチェックされることが一般的です。事件に関する詳細な打ち合わせは避け、本人の体調を気遣い、精神的に支える言葉をかけることが大切です。
  • 示談交渉のサポート:
    • 被害者がいる犯罪(窃盗、傷害、性犯罪など)では、被害者との示談成立が、早期釈放、不起訴処分、刑の軽減において極めて重要になります。
    • 示談交渉は、加害者の家族が直接行うと感情的な対立を招き、かえって状況を悪化させるリスクが高いです。必ず弁護士に依頼し、弁護士を通じて行うようにしましょう。ご家族は、示談金の準備などで協力します。
  • 身元引受人としての役割:
    • 早期釈放や起訴後の保釈請求の際に、ご家族などが「身元引受人」となり、本人の監督を約束することが、裁判所の判断に良い影響を与えることがあります。
  • 冷静さを保つ:
    • ご家族の動揺や不安は、面会などを通じて本人にも伝わります。つらい状況ですが、できる限り冷静さを保ち、弁護士と連携を取りながら、着実にサポートしていく姿勢が大切です。
  • 捜査機関への対応:
    • 警察や検察から事情を聞かれたり、資料の提出を求められたりすることがあります。どのように対応すべきか、どのような情報を提供すべきかは、必ず弁護士に相談してから判断しましょう。

まとめ

ご家族が逮捕・勾留されるという事態は、想像を絶する衝撃と不安をもたらします。しかし、そのような時だからこそ、一人で抱え込まずできるだけ早く、刑事事件に精通した弁護士に相談することが、ご本人にとっても、ご家族にとっても最善の道を開く第一歩となります。

逮捕後の72時間、そして勾留期間の最大20日間は、その後の手続きに大きな影響を与える非常に重要な期間です。早い段階で適切な弁護活動に着手することで、不起訴処分による早期の身柄解放や、起訴された場合でもより有利な結果を得られる可能性が高まります。

私たちは、突然の事態に戸惑うご家族に寄り添い、ご本人にとって最善の解決策を導き出すために尽力します。

当事務所では、事務所に最も近い上尾警察署の事件のみならず、例えば鴻巣、大宮、浦和、蕨、川口など埼玉県内の警察署に関する逮捕・勾留されている身柄事件は、できる限り即座に対応させていただいております。

埼玉県内の警察署のみならず、埼玉県外の警察署であってもできる限り速やかに対応させていただいております。例えば、上野警察署、麹町警察署(東京)や郡山警察署(福島)など、即日で対応した例はいくつもございます。

刑事事件の手続はよくわからなくて当たり前です。

お問い合わせはお電話でもメールでも構いません。ご家族が逮捕や勾留されてしまってお困りの方は、池長・田部法律事務所にご相談ください。

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