2025/05/15 コラム
交通事故後の接骨院(整骨院)通院、ちょっと待って!知っておくべき注意点
はじめに
交通事故に遭われた皆様に、心よりお見舞い申し上げます。追突事故などで「むちうち(頸椎捻挫)」や「腰椎捻挫」といったケガを負われた場合、整形外科での治療と並行して、身近な接骨院(整骨院)での施術を希望される方は少なくありません。確かに、接骨院での施術が症状の緩和に役立つケースもあります。
しかし、交通事故の治療費として接骨院の施術費用が認められるためには、いくつかの重要な注意点があり、これを守らないと「施術費を保険会社に支払ってもらえない」「後々の補償で不利になる」といったトラブルに繋がる可能性があります。
このコラムでは、交通事故によるむちうちや捻挫で接骨院(整骨院)に通院する際に、特に注意していただきたい点を詳しく解説します。当事務所では、こうしたトラブルを防ぐため、当事務所が交通事故に関する治療などで関与する整骨院・接骨院に対しては適切に対応するように助言をしておりますので、その点も併せてお伝えいたします。
決して接骨院や整骨院に通院されることそのものが悪いわけではないのですが、きちんと適切に理解の上、トラブルがないように通院を行いましょう。
接骨院(整骨院)と整形外科の違いを理解しよう
まず、接骨院(整骨院)と整形外科の違いを正しく理解しておくことが大切です。
- 接骨院(整骨院):
- 施術を行うのは「柔道整復師」という国家資格者です。
- 骨折、脱臼、打撲、捻挫などの急性または亜急性の外傷に対する施術(整復、固定、後療法など)を行います。
- 医師ではないため、レントゲン・MRI等の検査、診断、投薬、注射といった医療行為は行えません。後遺障害診断書も作成できません。
- 整形外科:
- 診察を行うのは「医師」です。
- 診察、検査(レントゲン、MRI、CTなど)、診断、投薬、注射、リハビリテーション、手術など、医療行為全般を行います。
- 後遺障害診断書を作成できます。
交通事故の治療においては、まず整形外科で医師による正確な診断を受けることが大前提となり、接骨院での施術はその補助的な位置づけと考えるのが一般的です。
【最重要】接骨院に通う前に必ずやるべきこと!
交通事故の治療費として接骨院の施術費用を保険会社に認めてもらうためには、以下のステップを必ず踏んでください。
- 必ず先に整形外科を受診する:
- 事故に遭ったら、自己判断で接骨院に直行せず、まずは必ず整形外科を受診し、医師の診察と検査を受け、診断書をもらいましょう。これがすべての基本です。
- 医師の許可・同意・指示を得る:
- 接骨院での施術を希望する場合は、必ず整形外科の担当医に相談してください。そして、「接骨院での施術が症状改善に有効である」という医師の許可、同意、または具体的な指示を得ることが極めて重要です。口頭だけでなく、可能であればカルテにその旨を記載してもらうと、より確実です。
- 保険会社へ事前に連絡し、了承を得る:
- 医師の許可を得たら、通院を開始する前に、必ず相手方の任意保険会社の担当者に連絡します。「整形外科の医師から許可を得た上で、〇〇接骨院に通院します」と伝え、保険会社から了承を得ておきましょう。 事前の連絡と了承がない場合、後から施術費の支払いを拒否されるリスクが非常に高くなります。
接骨院での施術を受ける際の注意点
無事に通院を開始できたとしても、以下の点に注意が必要です。
- 施術内容: 交通事故の賠償として認められやすいのは、むちうちや捻挫の症状緩和を目的とした施術です。単なる肩こり解消やリラクゼーション目的のマッサージ、健康増進のための整体などは、治療の必要性・相当性がないと判断され、保険適用外となる可能性が高いです。
- 通院頻度・期間: 症状に対して過剰な頻度(例:毎日)や、不必要に長期間の通院は、保険会社から疑問視されることがあります。また、整形外科への通院を全くせず、接骨院にのみ通院している場合も、「医師による経過観察が行われていない」として問題視され、施術費の支払いが打ち切られたり、後遺障害認定で不利になったりする可能性があります。必ず整形外科への定期的な通院(最低でも月1回程度)は継続しましょう。
- 施術費用: 接骨院によっては、自由診療で高額な施術費を設定している場合があります。保険会社によっては、妥当な範囲を超える施術費の支払いを認めないこともあります。
- 症状固定後の施術: 医師から「症状固定(これ以上治療しても改善が見込めない状態)」の診断を受けた後は、原則として接骨院の施術費も賠償の対象外となります。
保険会社との間で起こりうるトラブル例
上記の注意点を守らないと、以下のようなトラブルが発生しやすくなります。
- 医師の許可や保険会社への事前連絡なしに通院し、施術費全額が自己負担になった。
- 長期間、高頻度で通院していたら、途中から保険会社に「治療の必要なし」と判断され、施術費の支払いを打ち切られた。
- 整形外科への通院がほとんどなかったため、保険会社から「症状が客観的に確認できない」として支払いを拒否された。
- リラクゼーション目的とみなされ、施術費が支払われなかった。
後遺障害認定への影響は?
将来的に後遺障害の認定申請を考えている場合、接骨院への通院には特に注意が必要です。
- 後遺障害診断書を作成できるのは医師だけです。柔道整復師は作成できません。
- 後遺障害の認定では、事故当初からの症状の一貫性や、画像所見・神経学的所見などの医学的な証拠が重視されます。整形外科への定期的な通院がないと、これらの証拠が不足し、症状の存在や継続性を客観的に証明することが困難になり、後遺障害認定において極めて不利になる可能性が高いと言えます。
不安な時、トラブル発生時は弁護士へ相談を
「保険会社に接骨院の費用を支払ってもらえない」「医師の許可はどうやって得ればいい?」「整形外科と接骨院、どう通院するのがベスト?」など、接骨院への通院に関して疑問や不安、トラブルが生じた場合は、交通事故問題に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士は、
- 保険会社との交渉(施術費支払い、治療期間延長など)
- 適切な通院方法に関するアドバイス
- 後遺障害認定のサポート
- 最終的な示談交渉(慰謝料増額の可能性)
など、専門的な知識と経験に基づき、あなたが適切な治療と補償を受けられるようサポートします。
また、当事務所では、交通事故治療に関する上記のような注意点を十分に理解し、医師との連携や保険会社との適切な手続きを遵守するよう日頃からご連絡をいただく整骨院・接骨院には適宜適切な対応を行うように助言をしております。
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これらの接骨院・整骨院では、交通事故治療に関するトラブルが発生しにくいよう努めておりますので、安心して施術に専念しやすい環境といえます。
もし、これから接骨院(整骨院)に通院しようかお悩みの場合や、現在通院中の接骨院・整骨院での手続にご不安がある場合は、当事務所にご相談ください。
ご自身の自動車保険に「弁護士費用特約」が付いていれば、費用の心配なく、こうした相談や依頼ができる場合が多いです。まずは特約の有無をご確認ください。
まとめ
重ねてお伝えいたしますが、交通事故によるむちうちや捻挫で接骨院(整骨院)に通院すること自体が悪いわけではありません。接骨院(整骨院)の先生方も非常に熱心に対応をしてくれます。
しかし、その費用を交通事故の賠償として適切に認めてもらうためには、
- 必ず先に整形外科で医師の診断を受ける
- 必ず医師の許可・同意・指示を得る
- 必ず事前に保険会社に連絡し、了承を得る
という3つの鉄則を守ることが不可欠です。そして、治療期間中も整形外科への定期的な通院を継続し、医師による経過観察を受けることが重要です。
これらの注意点を守り、適切な手続きを踏むことで、安心して治療に専念し、正当な補償を受けることにつながります。もし疑問やトラブルが生じた場合、あるいは通院先でお困りの場合は、一人で悩まず、早期に当事務所にご相談ください。当事務所にご相談いただければ、適切な対応をアドバイスするとともに、必要に応じて、最適な解決策をご提案いたします。