2025/05/10 コラム
傷害事件で弁護士は必要?費用をかけて依頼するメリットとは
はじめに
友人との口論がエスカレートして手を出してしまった、お酒の席でついカッとなって相手を殴ってしまった…。日常生活の中で、予期せぬ形で「傷害事件」の加害者になってしまうことは、残念ながら誰にでも起こりうることです。
事件を起こしてしまった直後は、「たいした怪我じゃないから大丈夫だろう」「謝れば済むはずだ」と軽く考えてしまうかもしれません。また、「傷害罪くらいで弁護士を頼むのは大げさではないか?」「費用をかけてまで依頼する必要があるのだろうか?」と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。
しかし、傷害罪は刑法で定められた歴とした犯罪であり、安易な対応は逮捕や勾留、そしてなにより「前科」という重い結果を招く可能性があります。
このコラムでは、傷害罪で弁護士に依頼することがなぜ重要なのか、その具体的なメリットと、「費用をかけてでも依頼する価値」について解説します。
傷害罪とは?(意外と重い処罰と「前科」のリスク)
傷害罪は、「人の身体を傷害した」場合に成立する犯罪で、刑法により「15年以下の懲役または50万円以下の罰金」**という決して軽くない刑罰が定められています。
「暴行罪」(相手に暴力を加えたが怪我をしなかった場合に成立。2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金など)と違い、相手に怪我を負わせてしまった場合に傷害罪となります。殴る・蹴るといった直接的な暴力だけでなく、例えば、執拗な嫌がらせによって相手を精神的に追い詰め、うつ病などを発症させた場合なども傷害罪に問われる可能性があります。
たとえ怪我が軽くても、被害者が診断書を警察に提出すれば、傷害事件として捜査が進む可能性があります。そして、もし有罪判決(罰金刑を含む)を受ければ、それは「前科」となります。
前科が付くと、
- 再犯時に、より重い処罰を受ける可能性が高まる
- 一部の職業(公務員、警備員など)に就けなくなったり、資格(医師、弁護士など)を剥奪されたりする可能性がある
- 海外への渡航(特にビザ申請時)に影響が出る場合がある
- 周囲に知られた場合、社会的な信用を失う
など、将来にわたって様々な不利益が生じる可能性があります。「罰金くらいなら…」と軽く考えることはできません。
傷害罪で弁護士に依頼するメリット【費用以上の価値がある理由】
では、傷害事件で弁護士に依頼すると、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか? それは、費用負担を考慮してもなお、十分に価値のあるものです。
-
逮捕・勾留の回避 / 早期の身柄解放
- 傷害事件であっても、態様が悪質、被害者の怪我が重い、示談が難航しているなどの場合、逮捕・勾留される可能性があります。身柄拘束が長引けば、会社を解雇されたり、学校を退学になったりするなど、社会生活へのダメージは甚大です。
- 弁護士は、逮捕直後から接見(面会)し、捜査機関に対して勾留の必要性がないこと(逃亡や証拠隠滅のおそれがないこと)を客観的な証拠と共に主張したり、勾留決定に対する不服申し立て(準抗告)を行ったりすることで、逮捕・勾留の回避や早期の身柄解放を目指します。
-
被害者との示談交渉を円滑に進め、成立させる
- 傷害罪において、被害者との示談が成立しているかどうかは、その後の刑事処分を左右する最も重要な要素の一つです。 示談では、加害者が被害者に誠心誠意謝罪し、治療費や慰謝料を含む示談金を支払うことで、被害届を取り下げてもらったり、処罰を望まない(宥恕する)という意思を示してもらったりすることを目指します。
- しかし、加害者本人や家族が直接交渉しようとすると、被害者の感情を逆なでしてしまったり、法外な示談金を要求されたりして、交渉が難航・決裂するケースが少なくありません。
- 弁護士が間に入ることで、被害者の感情にも配慮しつつ、冷静かつ法的に妥当な内容での示談交渉を進めることができます。
-
不起訴処分の獲得(=前科回避!)
- 弁護士を通じて被害者との間で示談が成立し、被害者が加害者の処罰を望んでいない場合、検察官は「起訴猶予」として不起訴処分とする可能性が高まります。
- 弁護士は、示談交渉と並行して、本人の深い反省、二度と繰り返さないための具体的な取り組み(例:禁酒、カウンセリング受診など)、家族による監督体制などを検察官に示し、不起訴処分を獲得するために尽力します。
- 不起訴処分となれば、刑事裁判は開かれず、前科もつきません。これは、将来への影響を考えると、弁護士費用をかけてでも目指すべき、極めて大きなメリットです。
-
刑事処分の軽減(起訴された場合)
- 残念ながら起訴されてしまった場合でも、弁護士は刑事裁判において、示談の成立、反省の情、事件の偶発性、酌むべき事情などを主張・立証し、罰金刑や執行猶予付き判決など、可能な限り軽い処分が得られるよう弁護活動を行います。実刑判決(刑務所への収監)を回避できるかどうかは、人生において天と地ほどの差があります。
-
取調べへの適切な対応サポート
- 警察や検察からの取調べには、精神的なプレッシャーが伴います。弁護士は、取調べに臨む際の注意点や、黙秘権などの法的権利について具体的にアドバイスし、不用意な発言によって不利な状況に陥ることを防ぎます。
-
正当防衛・無罪の主張
- 相手から先に攻撃され、身を守るためにやむを得ず反撃した結果、相手が怪我をした(正当防衛の可能性がある)場合や、全く身に覚えのない容疑(冤罪)をかけられている場合は、最終的に無罪を主張する必要があります(ただし、疑容疑者・被疑者という場面では黙秘が有効な戦略である場合も多いです。)。弁護士は、証拠を精査・収集し、法的主張を組み立て、あなたの無罪のために全力で闘います。
-
精神的な支え
- 刑事事件の当事者になることは、想像以上のストレスです。弁護士は、法的なサポートだけでなく、今後の見通しを示すことで、あなたの不安を和らげ、精神的な支えとなります。
「費用をかける必要はあるのか?」という疑問に答える
それでも、「やはり費用が…」とためらわれるかもしれません。しかし、以下の点を考えてみてください。
- 「前科」の代償は大きい: 前科がつくことによる将来の様々な不利益(就職、資格、社会的信用など)は、弁護士費用という一時的な出費よりも、はるかに大きな損失となる可能性があります。前科を回避できる(不起訴処分を獲得できる)可能性があるなら、その価値は計り知れません。
- 不当に高額な示談金を払うリスク: 示談交渉を自分で行い、相場を知らずに相手の要求通りに高額な示談金を支払ってしまうケースもあります。弁護士に依頼し、妥当な金額で示談をまとめ、かつ不起訴などを目指した方が、結果的に経済的な負担が少なくなる可能性もあります。
- 時間と精神的コストの節約: 弁護士に任せることで、事件が長期化することによる精神的な消耗や、ご自身で対応する時間的なロスを防ぐことができます。特に刑事事件では様々なことに対する不安が生じますから、これらに対して相談できる相手がいるだけで心強いといえるでしょう。
多くの法律事務所では、初回相談を無料で行っています。費用も含めて、相談してみることが大切です。
まとめ
傷害罪は、決して「たいしたことない」犯罪ではありません。安易な対応は、逮捕、勾留、そして「前科」という、あなたの将来に大きな影響を及ぼす事態を招きかねません。
「弁護士に依頼する費用がもったいない」と感じるかもしれませんが、弁護士に依頼することで得られる「逮捕・勾留の回避」「被害者との円満な示談成立」「不起訴処分(前科回避)」「刑事処分の軽減」といったメリットは、多くの場合、費用負担を上回る価値を持っています。それは、あなたの未来を守るための「必要な投資」とも言えるでしょう。
もしあなたが傷害事件を起こしてしまった、あるいはその疑いをかけられてしまったら、どうか一人で悩まず、できるだけ早く、刑事事件に詳しい弁護士にご相談ください。早期の相談が、より良い解決への第一歩となります。