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2025/05/06 コラム

職場での盗撮、その代償は「解雇」と「前科」。手遅れになる前に弁護士へ

はじめに

スマートフォンや小型カメラの普及により、残念ながら盗撮事件は後を絶ちません。特に、私たちが多くの時間を過ごす「職場」という環境で盗撮が行われた場合、それは被害者の方にとって計り知れない精神的苦痛となるだけでなく、行為者自身にとっても、その後の人生を大きく狂わせる深刻な事態を引き起こします。

「出来心だった」「ストレス発散のつもりだった」「誰にもバレないと思った」…どんなに軽い気持ちで始めたとしても、職場内での盗撮は、信頼関係を根底から破壊し、職を失い、そして「前科」という消えない記録を残す可能性のある、極めてリスクの高い行為なのです。

このコラムでは、職場内盗撮がどのような法的責任を問われ、どのような厳しい結末を招く可能性があるのか、そして万が一、その事実が発覚してしまった場合に、なぜ一刻も早く弁護士に相談することが重要なのかを解説します。

職場内を盗撮したことで問われる罪とは?

職場での盗撮行為は、主に以下の犯罪に該当する可能性があります。

  1. 性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(性的姿態等撮影罪)違反:
    • 2023年7月に施行されたいわゆる盗撮罪、撮影罪と言われる比較的新しい法律です。正当な理由なく、人の性的部位や下着などをひそかに撮影する行為(盗撮)などを処罰します。職場の更衣室やトイレ、あるいはデスク下からスカート内を撮影するなどの行為は、この法律違反に問われる可能性が非常に高いです。
    • 法定刑は「3年以下の拘禁刑(※)または300万円以下の罰金」と定められています。(※拘禁刑:2025年までに懲役刑と禁錮刑を一本化したものとして導入予定)
  2. 都道府県の迷惑防止条例違反:
    • 各都道府県が定める迷惑防止条例でも、公共の場所や乗り物などにおける盗撮行為を禁止しています。職場の状況によっては、この条例が適用される場合もあります。
  3. 建造物侵入罪:
    • 盗撮する目的で、本来立ち入ることが許されていない場所(例:男性が女子更衣室や女子トイレに侵入するなど)に入った場合、盗撮行為とは別に建造物侵入罪(3年以下の懲役または10万円以下の罰金)が成立する可能性があります。

これらの罪は併合して処罰される可能性もあり、決して軽いものではありません。

職場内盗撮が発覚した場合の恐るべきリスク

職場での盗撮が発覚した場合、行為者は以下のような深刻なリスクに直面します。

  • リスク1:懲戒解雇 → 職を失う

    • 企業は職場秩序を維持する責任があります。職場内での盗撮は、他の従業員に多大な恐怖と不快感を与え、職場の信頼関係や風紀を著しく乱す重大な非違行為です。
    • ほとんどの企業の就業規則では、このような行為は懲戒処分の対象と定められており、最も重い「懲戒解雇」となる可能性が極めて高いと言わざるを得ません。一度失った職場の信頼を取り戻すことは、ほぼ不可能です。
  • リスク2:刑事事件化 → 「前科」がつく

    • 被害者が警察に被害届を提出したり、会社が刑事告発したりすれば、警察による捜査が開始されます。証拠隠滅や被害者への接触のおそれがあると判断されれば、逮捕・勾留される可能性もあります。
    • 捜査の結果、検察官が起訴し、裁判で有罪となれば(罰金刑であっても)、それは「前科」となります。前科は、その後の再就職活動で大きな障害となるだけでなく、一部の資格取得が制限されたり、海外渡航に影響が出たりするなど、人生の様々な場面で重くのしかかります。
  • リスク3:被害者からの損害賠償請求

    • 盗撮は、被害者のプライバシー権や肖像権、性的羞恥心や尊厳を著しく侵害する不法行為です。被害者から、精神的苦痛に対する慰謝料など、多額の損害賠償を請求される可能性が高いです。示談がまとまらなければ、民事訴訟に発展することもあります。
  • リスク4:社会的信用の失墜・家庭への影響

    • 事件が報道されれば、氏名や勤務先が公になるリスクもあります。そうなれば、家族や友人からの信頼を失い、地域社会にも居場所がなくなるなど、計り知れないダメージを受けることになります。

なぜ「手遅れになる前に弁護士」なのか?

このように、職場内盗撮のリスクは計り知れません。もし、あなたの盗撮行為が発覚してしまった、あるいは、発覚するかもしれないという強い不安がある場合、事態がより深刻化する前に、一刻も早く弁護士に相談することが極めて重要です。その理由は以下の通りです。

  1. 被害者との早期示談交渉の可能性 → 事件化回避・前科回避へ

    • 弁護士に依頼する最大のメリットの一つが、被害者との示談交渉です。特に、警察が介入する前や、捜査の初期段階で、弁護士を通じて被害者の方に真摯に謝罪し、適切な示談金を支払い、示談を成立させることができれば、被害届の提出を思いとどまってもらえたり、提出済みの被害届を取り下げてもらえたりする可能性があります。これは、刑事事件化そのものを回避できたり、不起訴処分(=前科がつかない)を獲得したりする上で、最も有効な手段です。
    • しかし、加害者本人が被害者に接触するのは絶対に避けるべきです。被害者の感情を逆なでし、事態を悪化させるだけです。弁護士が代理人として、被害者の心情に最大限配慮しながら、冷静かつ丁寧な交渉を行います。
  2. 会社への適切な対応に関するアドバイス

    • 会社に事実を知られた場合、正直に話すべきか、どのように説明すべきか、懲戒処分に対してどう対応すべきかなど、難しい判断が迫られます。弁護士は、状況を客観的に分析し、あなたにとって不利益が最小限となるような対応策をアドバイスします。場合によっては、懲戒解雇の有効性を争うことも検討できます。
  3. 刑事手続きにおける防御活動

    • 逮捕された場合の早期接見、取調べに対する適切なアドバイス、早期の身柄解放に向けた活動(勾留阻止、準抗告、保釈請求など)、不起訴処分獲得のための検察官との交渉、起訴された場合の刑事裁判での弁護(執行猶予獲得など)など、刑事手続きの各段階であなたを守るための活動を行います。
  4. 再犯防止・更生へのサポート

    • 盗撮行為の背景には、依存症などの問題が隠れている場合もあります。弁護士は、必要に応じて専門の医療機関やカウンセリング、自助グループなどを紹介し、あなたが過ちと向き合い、更生していくための具体的なサポートも行います。こうした取り組みは、刑事手続きにおいても有利な情状として考慮されます。
  5. 冷静な判断による事態悪化の防止

    • 発覚の恐怖から、データを削除したり、不合理な言い訳をしたりといった行動は、かえって証拠隠滅や反省していないという印象を与え、事態を悪化させます。弁護士に相談することで、冷静な視点から最善の対応をとることができます。

まとめ:取り返しがつかなくなる前に

職場内での盗撮は、一瞬の出来心や衝動が、あなたの社会的信用、キャリア、家族、そして未来そのものを破壊しかねない、極めて危険な行為です。その代償は、あなたが想像しているよりもはるかに大きいのです。

もし、あなたが職場での盗撮行為に関与してしまい、それが発覚した場合、あるいは発覚するかもしれないと強い不安を感じているのであれば、決して一人で抱え込まず、事態が深刻化する前に、できるだけ早く、刑事事件、特に性犯罪に詳しい弁護士に相談してください。

早い段階で弁護士に相談し、適切な対応をとることが、被害者の方への誠実な謝罪と賠償への道を開き、刑事事件化や前科を回避し、そしてあなた自身の更生と社会復棋への第一歩となります。時間は待ってくれません。勇気を出して、専門家の助けを求めてください。

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